「家計は目に見える物価だけでなく、内容量を減らすなどの実質値上げにも反応している。身近な商品の価格がいろいろ上がっていることで、体感物価は上昇している」

 日本総研の小方尚子主任研究員は、食品やガソリンなど生活必需品の値上がりが、特に年金で暮らすシニア層の消費マインドを冷え込ませているという。

「シニア層の家計に占める食品やガソリンの割合は非常に高くなっている。ここが値上がりすると、消費マインドに大きく影響する」

 物価上昇だけでも大変なのに、家計の余裕を奪う負担増は目白押しだ。

 例えば医療費。診療報酬の改定で、夜間や休日に電話対応などをしてくれる身近な病院には4月から、患者1人につき初診料が800円加算される。患者の窓口負担は原則1~3割で、3割の人にとっては240円の負担増だ。

 医療機関が連携して在宅患者への24時間の往診態勢などを整えると、患者1人当たり月2160円が加算される。

 窓口負担の月々の合計が上限額を超えると返ってくる「高額療養費制度」も、70歳以上の上限が8月から一部で引き上げられる。一般世帯だと外来費用は1万4千円が1万8千円になるため、月4千円の負担増になる人が出てくる。

 自営業者や無職の人らが入る国民健康保険(国保)の保険料も、自治体によっては4月から引き上げられるところもある。

 3年に1度の介護保険料の改定も、4月から実施される。高齢化に伴って介護保険の費用は膨らんでいて、多くの市区町村で保険料が引き上げられる。大阪市では65歳以上の基準月額が1169円上がって7927円になる。

 こうした医療や介護関連の負担増は、今後も続く見通しだ。値上げラッシュでただでさえ苦しい家計にとって、将来の不安は高まるばかり。少しでも蓄えておこうと節約志向になることで、個人消費が低迷し、景気が改善しにくくなる悪循環に陥っている。抜け出すには思い切った賃上げや、将来不安の解消が必要だが、実現しそうにない。

 景気が悪くならないように各家庭でできることは、あまり悲観的にならず「お金を使うときは使う」ことぐらい。値上げされたからといって敬遠せず、思い切ってビールでも飲みに出かけたほうがいいのかもしれない。(本誌・浅井秀樹)

週刊朝日 2018年4月13日号