似たようなケースで『モノマネする/される側』における許容の線引きの問題がありますが、モノマネやパロディーの場合は当然のごとく「こちらは偽物です」という意思表示とコンセンサスが存在しているため、よほどの不利益が本人に生じない限り、そこに対して肖像権だの商標だのを主張するのは基本的に野暮だと見做されます。また、最近はブルゾンちえみさんとコシノジュンコさんのように、パロディーではないものの、共通したビジュアルコンセプトを持つふたりが相乗効果を生むパターンも増えてきました。ちなみに女装業界の芸名なんて、「一発アウト」のような名前が全国津々浦々溢れています。『生森明菜』や『奄美枝(浜美枝)』といったさりげないものから『釜愚痴ホモ恵』『プリンセス・ティンコー』に至る芸術的レベルのものまで。ここまでバカバカしいと文句やケチをつける気も失せるというものです。

 察するに今回のデーモン閣下の件も、無断で使用した点もさることながら、そもそもこの『デーモン風高杉』というネーミングセンスの無さが多分に影響しているのではと思うのですが。『デーモン風』って、パスタじゃないんだから。この身も蓋もないダサさに自分が巻き込まれたら、肖像権云々の前に誰だって怒るでしょう。Eテレさんも『デーモン子連れ』とか『サーモン鮭科』とか『世を忍ぶ仮の高杉』とかもっと気概を見せなきゃ! そしたら閣下もここまでカッカすることもなかったでしょうに。余談ですが、私が出演している生番組に毎週メッセージを送ってくる視聴者さんに『P.N.ハゲノガレ・ヅラミ』という男性がいらっしゃいます。秀逸!

週刊朝日 2018年4月6日号

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ミッツ・マングローブ

ミッツ・マングローブ

ミッツ・マングローブ/1975年、横浜市生まれ。慶應義塾大学卒業後、英国留学を経て2000年にドラァグクイーンとしてデビュー。現在「スポーツ酒場~語り亭~」「5時に夢中!」などのテレビ番組に出演中。音楽ユニット「星屑スキャット」としても活動する

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