一方、びまん性脱毛のうち原因がはっきりしないものは「女性型脱毛症」と総称されている。

 男性では遺伝や男性ホルモンが関与している「男性型脱毛症」が有名だが、女性にも特有の脱毛症があることが近年、明らかになってきた。齊藤医師は、

「加齢による脱毛症は毛が細くなってくるのが特徴ですが、女性型脱毛症では髪の本来の太さを保ったまま、脱毛が起こるケースが多いようです」

 と言う。

 女性型脱毛症の中には男性ホルモンが関与しているものもある。更年期以降はエストロゲンが減ることで、男性ホルモンの分泌が相対的に多くなるためだ。

「しかし、メカニズムは男性型脱毛症のようにはっきりしていません。また、このタイプの脱毛症は10、20代の若い女性にも起こります。現在のところ、女性型脱毛症の原因は複雑でわからないことだらけ、なのです」(同)

 こうした背景から、女性型脱毛症に対しては医療機関ごとにさまざまな治療がおこなわれているのが現状だ。このため、齊藤医師ら専門家のグループは科学的根拠に基づいた治療を選び出し、「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」として発表した。

 これによれば現在、唯一、「おこなうよう強く勧める」とされるのが市販薬の「1%ミノキシジルの外用薬」の使用だ。商品名「リアップリジェンヌ」として知られる。ミノキシジルは血管拡張薬として開発された成分で、男性型脱毛症にも使用されている。

「医師の責任で国内未承認の薬の使用や治療法を実施しているところもあります。医師に脱毛症の知識があり、費用や副作用の可能性などを聞いた上で、患者さんが納得できる場合は試してみるのも一考です」(同)

 ところで、まつ毛にも毛周期があり、これが乱れると脱毛症になることがある。「まつ毛貧毛症」と呼ばれている。頭髪の脱毛とともに起こることが多く、前出のびまん性脱毛のほか、円形脱毛症、がん化学療法の副作用などが引き金となる。

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