相続人全員が合意できるなら、遺言や法定相続分にとらわれず、自由な割合で相続することもできる。いずれにしても、協議が成立したことを示す遺産分割協議書には、全員の署名・押印が必要だ。1人でも反対すれば協議は成立しない。

 成立すれば、相続した人それぞれが受け継ぐ財産に応じて、相続税を納める。

 協議が成立しない場合は、家庭裁判所での遺産分割調停や審判に委ねられる。調停は民間の調停委員2人以上と裁判官1人からなる調停委員会が助言や解決案を提案して、合意を促す。それでもまとまらない場合は、審判で裁判官の判断を求める。作花知志弁護士は、できるだけ話し合いでの決着をすすめる。

「財産が平等に分けられていないことについて争われることが多い。審判の結果に納得がいかなければ不服申し立てもできますが、時間もかかります。できれば話し合いで決着をつけたいところです」

 遺産分割協議がまとまらず「未分割」の状態でも、10カ月以内に相続税は納めなければいけない。期限を過ぎると本来の税額に加え、無申告加算税や延滞税がかかってくる。相続人は法定相続分に従って財産を受け取ったものとして相続税を計算し、申告・納税する。

 このケースでは、配偶者の税額軽減といった特例が適用できず、いったん高額な相続税を納める。3年以内に遺産を分割して再申告すれば、払いすぎた税金は戻ってくる。

「生前に話し合っていたとしても、被相続人が生きていたら現実感がない。『それでいいんじゃないの』『お父さんのやりたいようにしなよ』などと、その場では不平や不満が出ないこともあります。しかし、亡くなった後には自分が遺産をどれだけ受け取れるか具体的な形で目の前に示される。被相続人もいなくなりますから、遠慮もありません。相続人の夫や妻が口出しするようになれば、余計こじれる。遺産分割協議がまとまるように、事前に備えておくに越したことはありません」(佐藤和基税理士)

 家族が亡くなれば、葬式や片付けなどもあり、相続だけにかかり切ることはできない。10カ月間はすぐに過ぎてしまう。いざというときに慌てないためにも、十分な準備をしておきたい。(本誌取材班)

週刊朝日 2018年2月23日号