貝原益軒が養生訓で語った「心の内にある楽しみ」 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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貝原益軒が養生訓で語った「心の内にある楽しみ」

連載「貝原益軒 養生訓」

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週刊朝日#ヘルス

帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「死を生きる」(朝日新聞出版)など多数の著書がある

帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「死を生きる」(朝日新聞出版)など多数の著書がある

貝原益軒が養生訓で語った「心の内にある楽しみ」(※写真はイメージ)

貝原益軒が養生訓で語った「心の内にある楽しみ」(※写真はイメージ)

 西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱する帯津良一(おびつ・りょういち)氏。貝原益軒の『養生訓』を元に自身の“養生訓”を明かす。

*  *  *
【貝原益軒養生訓】(巻第二の21)
ひとり家に居て、閑(しずか)に日を送り、古書をよみ、
古人の詩歌を吟じ、(中略)月花(つきばな)をめで、草木を愛し、
四時の好景を玩(もてあそ)び、酒を微酔(びすい)にのみ、園菜を煮るも、皆是(これ)心を楽ましめ、気を養ふ助なり

 益軒は養生訓で、楽しむことについて、様々に語っています。すでに紹介しましたが(5月19日号)、「善い行いをして、健康で、長生きする」のが人生の三つの楽しみだと説いています。さらには、「年老いたら、自分の本来の楽しみだけに専念すべきである。ほかのことに気をつかってはいけない」(巻第八の23)とも語っています。そして、その楽しみとは「世俗の楽に非ず。只、心にもとよりある楽」だというのです。

 この「心にもとよりある楽」とはどういうものなのでしょうか。益軒には養生訓とは別に「楽しみ」について語った『楽訓』という著作があります。そのなかでこう説明しています。
「本来、人の心には生まれつきの楽しみがある。それが外物にふれて、その助けを得て、内にある楽しみがさかんになるのである。たとえば、人には生まれつきの元気がある。これは生命のもとである。しかし、飲食や衣類など外からの養いがないと、飢え凍えて、元気を保てない。外からの養いで内の楽しみを助けるのは、外にある飲食や衣服の養いで内なる元気を助けるようなものである」

 そして、この「外からの養い」とは、世俗のものではないのです。益軒はこう続けています。

「欲になやまされずに、天地万物の光景の美しさに感動すれば、その楽しみは無限である。この楽しみは朝夕に目の前に満ちている。これを楽しむ人は、山水月花の主人であるから、人に求める必要がない。金で買う必要もない。(中略)およそ世俗の楽しみは心を迷わし、身をそこない、人を苦しませる。君子の楽しみには迷いがなく、心を養う」

 この心を養う楽しみについて、養生訓の中ではこのように語られています。

「ひとり家にいて、静かに日を送り、古書を読み、古人の詩歌を吟じ、香をたき、(名人の筆跡を写した)古法帖を楽しみ、山水を眺め、月花をめで、草木を愛し、四季の景色を楽しみ、酒をほろ酔いで飲み、庭でできた野菜を煮るのが、みんな心を楽しませ、気を養う助けになる。貧賤の人であっても、こうした楽しみはいつでも得られる。もしこの楽しみをよく知っていれば、富貴であってもこれを知らない人にまさっている」(巻第二の21)

 益軒先生は実にゆったりとした楽しみを持っていたようで、羨ましい限りです。私の場合、「山水を眺め、月花をめで、草木を愛し」とはいかないのですが、出張の前後に都内のホテルに泊まることがあり、そのときはのんびりとした時間を過ごします。朝食の時にビールを飲んだり、神保町まで出かけて2時間近く本を眺めたり。

 といっても、私の一番の楽しみは毎日、欠かすことのない晩酌です。先日、知人の家で晩酌をしていたら、そこの家の猫がやってきて、私の隣で眠りだしました。その姿を見ていたら、妙に気持ちが落ち着き、酒がうまいのです。「猫をめでる」楽しみも、またいいものだと思いました。

週刊朝日 2017年12月29日号


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帯津良一

帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「死を生きる」(朝日新聞出版)など多数の著書がある

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