林:ご両親は本を読む方だったんですか。

綿矢:そんなに本が好きというわけじゃなかったんですけど、「本代だけはお小遣いとは別にいくらでも出してあげる」と言われていて、それで本が趣味になったという感じです。

林:素晴らしいです。

綿矢:古本屋に行って、自分で好きな本を買ってきて読んでました。

林:京都育ちですよね。京都はしょっちゅういろんな展覧会をやっていますし、寺院もありますが、ああいうものに触れる少女だったんですか。

綿矢:高校生のときは外出があまり好きではなくて、京都のお寺を巡ったりはしたことありませんでした。家で本や漫画を読んだり、テレビドラマを見たりして、京都の文化には疎くて。内向的なタイプだったので、東京に出てきたときにいきなり一人暮らしが始まって、すごく大変でした。

林:しかも19歳で芥川賞をとってすごい騒ぎになったから、内向的な少女としては大変だったでしょう。

綿矢:昼間は大学で授業を受けて、夜に書こうと思うんですけど、プレッシャーもあってぜんぜん書けませんでした。

林:今はお子さんがいるから、夜、出かけたりもしませんよね。

綿矢:そうですね。独身時代は同年代の小説を書いてる人たちと遊んだりしていたので、けっこう外に出てましたけど、今、それをしたら育児放棄になるので(笑)。

林:ご主人はお役人ですよね。どこで知り合ったんですか。

綿矢:『勝手にふるえてろ』を書くちょっと前に書いてた小説がボツになって……。

林:えっ、ボツになったの?

綿矢:ぜんぜんうまく書けなかったので、ボツになりました。その取材のために理系の大学院生に会わせてほしいと文藝春秋の編集者の人に頼んだら、紹介してくれたのが菌を繁殖させる研究をしていた夫でした。そこから友達づき合いが長くて、その後、結婚しました。だから文藝春秋がキューピッドですね。芥川賞ももらったし、足を向けて寝れないんです(笑)。

林:へーえ、そうなんだ。イケメンですか。

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