やり方は簡単だ。まずは「調身(ちょうしん)」。姿勢をととのえよう。足を組み、手を組んだら、体を前後左右に動かし、重心を安定させる。目は閉じないでよい。

「見たものをありのままに受け止めるためです。目を閉じたり、耳栓をしたりすると無心になれるかというと、実はその反対です。人は逆に見えないものや聞こえないものに思いをはせてしまいます。だからどうぞ目は閉じずに、見えるものから目を背けずにしてください。そして見たものをしっかり受け止め、それに『とらわれない心』の土台を作っていきましょう」

 姿勢をととのえたら、次は呼吸をととのえる(調息[ちょうそく])。まずゆっくり体中の空気を抜くつもりで息を吐く。吐き終わったらその反動を使って静かに息を吸い込む。

「吐く息を大事に、静かにゆっくり、長々と出すことが大切です。リラックスして全身の毛穴で呼吸しているイメージを持つと、理想の呼吸に近づけますよ」

 そして最後に調心(ちょうしん)。

「姿勢と呼吸がととのったら、心をととのえていきます。無念無想を急に求めないことです。大事なのは、『坐ってよかったな』と思えるような『気持ちのよい坐禅』ができるように心を集中することです」

 そこで臨済宗の伝統的な呼吸法「数息観(すそくかん)」を繰り返し行うのもいい。

「口から息を吐き、鼻から息を吸う呼吸法です。だいたい7~10秒で息を吐き、自然に息を吸う。息を吐き出すときに心の中で『ひとーつ』『ふたーつ』と数えていってください。そして10までいったら、また『ひとーつ』に戻って、同じことを繰り返していくのです」

 そうして呼吸し、頭の中が数のことだけでいっぱいになると、嫌なことはどんどん心の外へと捨てられる。

「捨てるのは嫌なことだけではありません。坐禅を組むと、人は今までの人生の中で『よかったこと』も捨てていこうとします」

 えっ、よかったことは、何も捨てなくてもよいのでは。

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