ジャーナリストの田原総一朗氏は、中国の特使が北朝鮮へ派遣されたことについて、日本政府が不安を抱いているという。
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いま、日本では北朝鮮問題について、二つの見方が生じている。
米国のトランプ大統領が、はじめてのアジア歴訪を終えて帰国した。前回も記したが、トランプ大統領は、日本の安倍首相と韓国の文在寅大統領には「米国は北朝鮮への圧力を最大限まで高めていく」と強調し、安倍首相も文大統領も完全に一致したようだ。
だが、日本も韓国も「北朝鮮への圧力を高める」とは言っても、具体的な手段は、ほとんどない。その点、中国はまったく違う。中国は、北朝鮮を破綻に追い込む具体的な手段を、いくつも有している。たとえば、北朝鮮に送り込んでいる原油のパイプを全面的に止めれば、北朝鮮の国民の生活は成り立たなくなる。だから、中国がその気になれば、北朝鮮は核の廃棄にも応じざるを得なくなる。そこで、米中首脳会談に、世界中が注目したのであった。
ところが、習近平国家主席は「(9月の)国連安保理の決議を守る」としか言わなかった。「北朝鮮に対する圧力を強化する」とは言わず、トランプ大統領も反対しなかった。
ここまでは前回も記したのだが、トランプ大統領はなんと、その後訪れたベトナムで、ツイッターに「彼(金正恩)と友人になるように頑張ろう。いつかは実現するかもしれない!」と書き込んだのである。さらに「(友人関係が)実現すれば、北朝鮮にも世界にも良いことだ」と強調した。
トランプ大統領は、いったい何をどう考えているのか。日本の新聞各紙も、強い困惑を示した。さらに11月9日に、信じられない情報が流された。
北朝鮮は9月15日に中距離弾道ミサイルを発射したのだが、もし北朝鮮が60日間、つまり11月15日まで核実験やミサイルの再発射を自制すれば、米国は北朝鮮と対話をしてもよい、要するにトランプ大統領が金正恩委員長と会う、というのである。