これは、テレビ各局の報道番組でも北京駐在の特派員たちが語っているので、それなりに裏がとれているのであろう、と私はとらえていた。

 ここまでは、前回の疑問符の延長であった。ところが13日の夜、元政府幹部だった人物が、17日に中国の習近平主席の特使が北朝鮮に派遣されることになった、と教えてくれた。しかも、トランプ大統領も承知しているという。17日とは、問題の60日目の2日後である。

 元政府幹部は、特使はもちろん金正恩委員長と会う、つまり習近平主席は米国と北朝鮮の対話の仲介をするつもりなのではないか、と説明した。これが事実ならば大変なことだ。彼は米・中・北朝鮮で対話が進み、日本が外されるのではないか、と心配しているのである。

 14日に、外務省筋に特使のことを確かめた。外務省筋は特使の派遣は認めたが、慣例として党大会についての説明をするためで、特別の意味はない、とみているようだった。

 そして、16日に新聞各紙が、17日の北朝鮮への特使の派遣を大きく報じた。元政府幹部の情報は事実だったのである。派遣されるのは、党中央対外連絡部トップの宋濤部長で、習主席の側近中の側近だということだ。ただし、特使の派遣の目的については、対話要請説と、慣例であって特別の意味はない、との二つの見方に分かれている。だが、官邸は、米、中、北朝鮮の接近に相当不安を抱いているようである。

週刊朝日  2017年12月1日号

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田原総一朗

田原総一朗

田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年、滋賀県生まれ。60年、早稲田大学卒業後、岩波映画製作所に入社。64年、東京12チャンネル(現テレビ東京)に開局とともに入社。77年にフリーに。テレビ朝日系『朝まで生テレビ!』『サンデープロジェクト』でテレビジャーナリズムの新しい地平を拓く。98年、戦後の放送ジャーナリスト1人を選ぶ城戸又一賞を受賞。早稲田大学特命教授を歴任する(2017年3月まで)。 現在、「大隈塾」塾頭を務める。『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)、『激論!クロスファイア』(BS朝日)の司会をはじめ、テレビ・ラジオの出演多数

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