東名事故の石橋容疑者。猛省だけでは済まされない(c)朝日新聞社
東名事故の石橋容疑者。猛省だけでは済まされない(c)朝日新聞社

 今年6月、東名高速道路下り線で起こった妨害行為による死傷事故で、被害者の車を執拗(しつよう)にあおりながら追い越し車線で停車させ、追突事故を引き起こしたとして「自動車運転死傷処罰法違反」(過失運転致死傷)で逮捕された石橋和歩容疑者(25)は、事故の1カ月前にも3台の車に対して、進路妨害や幅寄せ、接触、窓をたたくなどの行為をしていたという。今回の事件はこのまま「過失」で処理されてよいのか。過去の妨害行為の事実も積み上げ、「未必の故意」が立証されるべきだとの声もある。

 実は、道路上での理不尽な交通トラブルは頻繁に起こっている。いずれも発端は、「ライトがまぶしい」「バイクに抜かれたとき目が合った」「クラクションを鳴らされ頭にきた」などささいなことだ。

 理不尽な人とは生活のあらゆる場面で遭遇する。電車内でマナーの悪いオバサンが逆上し、はたまた社内では注意された部下が開き直って悪態をつく。自己愛か、過剰の防御本能なのか、本来であれば、謝罪する場面で怒ってしまう。自身の行いの原因を他人のせいにしてしまう。こんな環境にさらされても、無抵抗を貫かなければならないのか……。

 今回の事件も、そもそもはパーキングエリアで迷惑駐車をしていた容疑者に、被害者が口頭で注意をしたことがきっかけだった。だが、それが引き金となって、相手を殴る、刃物で刺す、車でひくなど、殺人事件にまで発展しているケースは枚挙にいとまがない。

 理不尽な人に絡まれたとき、いったいどう対処すればよいのだろうか。交通問題のケースについて、元検察官で弁護士の工藤昇氏は語る。

「今回の東名の事件は、捜査次第では殺人など故意犯での立件も検討すべきでしょう。こうした状況に巻き込まれたら、危険から身を守るために、車のドアや窓は決して開けず、相手にならない、あおられても無理はしないことが大切です」

 工藤弁護士もかつて車を運転中、後続車から危険なあおり行為を受け、信号待ちでドアをたたかれた経験があるという。

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