作家・室井佑月氏は、北朝鮮のミサイル発射に際して、政府がとった一連の対応に憶測をめぐらしている。

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 東京新聞の望月衣塑子(いそこ)記者が、菅官房長官記者会見で、8月31日と9月1日、北朝鮮のミサイルやJアラートについて質問した。

 かいつまんでいうと、

──ミサイル発射の前夜、安倍首相は公邸に宿泊した(滅多にない)。前夜からなんらかの情報があったのではないか、だとしたらなぜ国民にもっと早い時点で通知しなかったのか、安全で問題ないと思ったから伏せていたのか。Jアラートが作動しても国民が逃げる時間はない、前夜の情報の中で日本の領土領海にミサイルが落ちる可能性が高かったら、国民は知らせてもらえたのか。どういう情報の判断で、当日、その日は伝えられなかったのか──。

 そして、菅さんは望月さんに質問され、かいつまんでいうとこう答えていた。

──政府はありとあらゆる方法を取って、国民の生命と財産を守ることを考えている。が、その考えは控えさせていただく──。

 このことに関して、日本政府がどの程度の情報収集能力があるか、政府の最高機密なんだから、こんな公の場で答えるわけないだろ、そういって彼女を批判している評論家などがいる。

 えーっ、あたしは菅さんは答えたくないから、逃げただけだと思うけど。

 この国の情報能力がすごいってことにすれば、安倍首相は前日から知っていて黙ってたってことになり、それも問題だし、原発は止めないくせにJアラートをあんなに広範囲で流したのも、なんらかの意図があると思われても仕方なかろう。

 
 ミサイルは発射しないと軌道はわからない、それも的確じゃないから、あんな広範囲でJアラートが鳴った、それが今のこの国の能力といわれれば、だったらアメリカとつるんで北朝鮮を煽る真似すな、といいたくなる。国民の命と財産を守るって、口だけかいと。

 ミサイル発射後の会見では、安倍首相も、菅官房長官も、「これまでにない深刻かつ重大な脅威」といっていた。これがまた、政府のいっていることがわからなくなる理由のひとつ。

 官邸が情報をつかんでいても国民に知らせなかったのは、国民に不用意に不安を与えないため、そう考えたのかもしれん。

 だけど、それなら「これまでにない深刻かつ重大な脅威」なんて言い方をするわきゃない。北朝鮮がこの国を飛び越えてミサイルを撃つのは5回目、てかこの国はずっと前からミサイルの射程距離に入っておる。

 急にアタフタしだしたのは、ミサイル開発が進み、アメリカに届きそうになったから。北朝鮮もアメリカと話がしたくて、ミサイルを連発している。そこに安倍さんが入り込んで、国民に対し危機の大安売り。

 そうそう、9月1日、首相官邸報道室は、東京新聞に対し、注意喚起するように書面を送った。ミサイルの件じゃなくて、望月記者の加計学園に対する質問についていちゃもんを付けた。

 わかりやすすぎて、まさかと思わせる作戦か?(国民向け)

週刊朝日 2017年9月22日号

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室井佑月

室井佑月

室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

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