松原:でも与党は本来、多様な主義主張と権力闘争で活気が出る。緊張関係の中で政策が磨かれるものと思うのですが。

御厨:そうそう、それが党内で完全になくなってしまっている。

松原:小選挙区制のせいなんですかね。

御厨:派閥政治が崩壊し、いやでも官邸主導になったということ。党では総裁と幹事長が全部公認権握ってるから。官邸も党も総理・総裁への一極集中という状況でしてね、誰もが身動きが取れない状況になっています。しかも、安倍さんは異論、反論をそもそも好まない人です。来年9月の総裁選で安倍3選がすんなりいくかどうかはわからないけれども、今はそれを阻むものがいない。

松原:このまま行っちゃいそうですね。党内が無風であることがぞんざいな国会運営につながったわけで。

御厨:でも、支持率が下落傾向で、もう解散なんか到底できないからね。さらに都議選で負けたら余計、そうなるから。来年12月には衆院議員の任期満了がくるから、その間のどこで解散をしたら一番いいか。はっきりしてるのは、12月任期満了でやったら絶対いいことない。前の麻生政権の終わりみたいになってくる。少しでも有利な解散をするには、というサイクルに入る。それだったら総裁選に岸田さん、石破さんとかが出て、新たな総裁の下、総選挙という力学が働く可能性も否定できません。

松原:支持率次第では来年の6月あたりで、他の候補も仕掛ける動きを見せるかもしれない。安倍さんも今は復興と五輪で何となく景気が上向いているので、落ち込みが予想される2020年以前に改憲せざるをえない。好況でしか政権浮揚は望めないのですから。

御厨:安倍さんは五輪までやるつもりだから、党内はますます緩くなっていく。

松原:そういう意味では、自民党は人材難ですね。安倍さんが後継者を育てていない。岸田さん、稲田(朋美防衛相)さん世代の次は、小泉進次郎さんまで飛んでしまう。相当ピンチです。今の自民党には人材育成システムが機能していない。やっぱり小選挙区制で自由にモノが言えなくなったせいでしょう。都議選後の国政の焦点は内閣改造ですが、国民は少々の入れ替えでは心機一転と受け取らないでしょう。進次郎さんや橋下徹・前大阪市長ら若者、イロモノを入閣させるかがカギになると思います。

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