御厨:安倍さんはイロモノ好きだから、その辺りは考えてますよ。ただ根幹のところで、麻生さんや菅さんは代えないと思います。党役員人事でも、幹事長の二階(俊博)さんも含めて留任だと思います。結局、代えることによる不安定性に今の政権が耐えられるかどうかです。不安定化するよりジリ貧でも安全パイを取るのではないか。

松原:もちろん反対は多いと思いますが、実績をそれなりに積み重ねてきている自衛隊の存在を明文化することについては、国民は容認するでしょう。でも改憲への道のりを考えると、今国会での「共謀罪」法は、無理やり「テロ」や「五輪」という粉飾で通したものの、警察に何をさせるつもりか不明確です。国民は逆に不祥事が多いと理解しているんじゃないか。今国会は何でも数で通した感じで南スーダンの問題など大臣答弁もボロボロでした。やったことは“印象操作”と数の論理だけでしたね。

御厨:八方塞がりです。

松原:歴代首相でこんなに言葉が多い人はいなかった。国会で野次まで飛ばして。昔だったら、問責連発だったでしょう。

御厨:首相以外の閣僚のほうもミゼラブル(悲惨)ですよ。金田勝年法相なんて何のためにいたんだという感じです。稲田さんもそう。大体、答弁に出ようとするのを首相が止めることなんてありえないです。

松原:金田さんはあまりにひどくて、問いただすのに時間を取られて「共謀罪」の本質的な議論をしないで済んだ面もあります。

御厨:安倍さんは自民党改憲史上、めずらしく「自衛隊違憲論」をかざし、9条3項を持ち出してきた。本当は去年地ならしをしようと思ったところに、陛下が突然、退位についてお言葉を述べられたので、それどころじゃなくなったことが背景にあると思う。特例法のめどがついた5月に改憲を打ち出した。内容がクルクル変わりますが、とにかくお試し改憲はやりたいのでしょうね。

松原:安倍さんは最近、アベノミクスと言わなくなりましたね。金融政策は出口が遠くて変更がきかない。政権浮揚には軍事動乱しかないんじゃないかなあ。北朝鮮が何か起こせば、やはり安倍自民だけが頼りになるという感じで。

御厨:北朝鮮はどんどんミサイル飛ばしてますが、昨今は日本も慣れてしまって、安倍さんに期待しようという流れにはならないと思います。

週刊朝日  2017年7月7日号より抜粋