野田佳彦・民進党幹事長(撮影/写真部・小原雄輝)
野田佳彦・民進党幹事長(撮影/写真部・小原雄輝)

 天皇陛下の退位を実現する特例法が、参院本会議で自由党を除く全会一致で可決、成立した。天皇陛下が退位の意向を表明してから10カ月。関係者には「皇室国会」はどのように映ったのか。野田佳彦 民進党幹事長に聞いた。

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 6月9日、天皇陛下の退位を実現する「天皇の退位等に関する皇室典範特例法」が参院本会議で全会一致で可決、成立しました。

 法案成立に深くかかわってきた立場としては、まずはホッとしています。

 去年の8月8日に、陛下が退位をにじませるビデオメッセージを公表なさった。そのお言葉を、しっかりと受け止めて制度改正の議論の起点にしようというのが我々の立場でした。有識者会議が密室で大勢を決めていく中、昨年11月のヒアリングにおいて、「生前退位を認めない」という意見がありました。陛下は国民統合の象徴でもあります。行政が勝手に決めるのではなく、主権に基づき国民から選ばれた国会議員が方向性を出すことが大事でした。同時に国会でもいまの陛下一代限りの特例法にしようという動きが強かった。それは有識者会議が大勢を密室で決めていくなかで、陛下のお気持ちにそったものではない流れがありましたね。中身については多数対少数ならば野党は負ける。だが正副議長が取り組むとなれば、衆参で2:2の構図じゃないですか。その中でもっていくことが大事だった。政府、つまり菅義偉官房長官は「将来の先例となり得る」と認めました。

 民進党が要件としたのが、第1条の「国民は天皇陛下のお気持ちを理解し、これに共感している」と退位に至る事情を記した部分や、特例法の施行日について「首相が皇室会議の意見を聴いた上で、政令で定める」とした部分です。間接的にではあるが、皇室の将来について皇室側がかかわることができてよかった。

 また我々がこだわったのは、付帯決議に明記した、「女性宮家」の創設です。

 そもそも、「女性宮家」創設は、私が首相在任時の2011年10月、当時の羽毛田信吾宮内庁長官が、官邸に「皇族の数の減少が危機的な状況にある」と説明に見えたのが始まりでした。同時に、有識者会議が女性・女系天皇容認の答申を出した小泉内閣時の関係者からも同様の話は聞こえた。苦労しながら論点整理まで漕ぎ着けましたが、自民党の安倍政権に代わり、残念なことに店晒しとなった。安倍政権下では、皇族の高齢化や数の減少など皇室を取り巻く危機的なメッセージは黙殺されてきたのでしょう。陛下の「お言葉」は、私を含め政治家の不作為の結果ですから、耳にしたときは、非常に残念でした。女性皇族14方の内7名が未婚で適齢期に差しかかっている。急がなければならない課題でした。「眞子さま婚約へ」との一報が流れたのは、特例法案が閣議決定される3日前という難しいタイミングでした。「女性宮家」の明記が焦点でしたから、「追い風になる」どころか、期待値が高まっていた分、明記できなければ苦しい立場になる、と必死でした。

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