ようやく歯止めがかかったものの13連敗した巨人。しかし、「『開き直り』ととられてもおかしくない」プレーだと、西武ライオンズの元エースで監督経験もある東尾修氏は苦言を呈する。

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 巨人が球団ワースト記録を42年ぶりに更新する連敗記録を打ち立ててしまった。就任1年目の長嶋茂雄さんが監督として指揮を執り、球団史上唯一の最下位に沈んだ1975年の11連敗を上回った。

 何をやっても駄目。投手が最少失点に食い止めた試合では打線が打てない。逆に援護をもらっても投手は抑えられない。2週間以上勝ちから遠ざかると、選手もプレーや選択に迷いが生じるのは無理もない。私の現役時代にもこれほどの大型連敗は経験ないことだから、現場で戦う者にしか、その苦しみはわからない。

 常勝を義務づけられた巨人だからなおさらだ。でも、今いる1軍の選手以上の戦力が2軍にあるわけじゃないよ。どんな大型連敗だろうが、現状を打破しなきゃいけないのは、監督、コーチ、そして1軍で戦っている者たちだ。

 高橋監督は采配で最善手を打つことに腐心すべきだし、選手は打開のために心の弱さを捨て、前を向いて戦っているか。あきらめとか開き直りは、本当に弱い人間がとる手段である。勝つためにあがき、メンタルを整え、立ち向かったのか。フロントも含めて全員が胸に手を当てて、客観的に見つめ直す機会ととらえなければいけない。

 
 高橋監督の采配でいえば、守護神カミネロを2軍に落として、打線強化なのかクルーズを上げた。打開策を探るのはわかるが、メンタル面の不安や調子の下落以外の理由なくして、投手出身の監督であれば、絶対にやらない入れ替えである。今の時代の野球は、後ろ(九回)から逆算できるかが大事。投打の相乗効果は計り知れない。勝利の方程式を持つ球団なら、先発投手は「七回まで頑張れば」と思えるし、打撃陣も「終盤で1点勝ち越せば」と戦いが明確になる。そこを捨ててまで入れ替えを断行したのだから、もっと深刻な何かがあるのではと勘ぐってしまう。

 捕手にしてもそうだ。6月6日の西武戦で、エース菅野が3点リードの四回、6~9番の下位打線に4連打を浴び、逆転負けの要因となった。外角球ばかりだよ。パ・リーグの打者であれば、外角1球で凡打してくれない。捕手であれば、その日の菅野の状態と打者との力関係を把握し、最善の手を尽くす配球をすべきだ。まして、目先の1勝が重たい試合だったはず。序盤に菅野の球数がかさみ、3点リードを得て安易に外角一辺倒で下位打線の凡打を誘おうとしたのなら、あまりにチーム状況、投手の状態、相手打者との力関係が見えていないと言わざるを得ない。先発マスクをかぶった小林が「負けがこんでいるからこそ、小を捨てて……」と考えていたのなら、前述した「開き直り」ととられてもおかしくない配球選択だった。

 もう一度言う。巨人は常勝を義務づけられた伝統球団である。だから「勝利」を捨てて「育成」などを考える必要はない。「巨人ウェー」として「勝利」と「育成」を両立させる方策を探るべきだ。ただ、今の巨人が、相手からはどう見えているかだけは知っておくべきだ。145キロそこそこの直球に振り遅れてファウルでカウントを献上する中軸。そして脇を固める選手たちは結果だけ求め、こぢんまりしている。これでは怖さをほとんど感じることはない。

週刊朝日  2017年6月23日号

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東尾修

東尾修

東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95~2001年)に2度リーグ優勝。

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