新入試まで4年を切り、対策も始まっている。駿台予備学校は、新入試に向けた模試を作成し始めた。

「たとえば、現代文では実用的な契約書の読解や統計データを読み解く問題を作成していきます。また、外国人の英語教師が少ない地方向けに教育ツールを提供し、地方と都市の教育格差を是正することも必要だと考えています」(石原さん)

 河合塾は、偏差値を測る従来の模試とは異なるテスト「学びみらいPASS」を開発した。

 テストはペーパー形式で、英語・数学・日本語の教科学力以外に、情報収集力や課題発見力、仲間と協力して課題の解決につなげる対人基礎力なども測定する。

 さらに、生徒の職業適性や学問適性を分析。日ごろの学習習慣や生活リズムも把握し、仕事や進学といった将来の目標を達成するために、何が必要かを結果として提示する。

 開発に関わった河合塾・教育イノベーション本部の中川國敏エグゼクティブ・マネジャーは言う。

「学びみらいPASSは、高校生の進路選択で必要な能力について客観的な指標を提供するものです。勉強だけできても社会人としては一人前でなく、逆に教科学力が低くても、いわゆる『地頭(じあたま)力』の高い生徒もいます。それを数値として可視化し、多面的な能力を見ることをめざしています」

 16年に高校生を対象に始め、今年度の受験者数は3万人以上を見込む。

 東京都新宿区の保善高校も今年度から、学びみらいPASSを導入した。5月にテスト結果を初めて受け取った1年生の男子は言う。

「建築家をめざしているので、これまで理系科目を中心に勉強していましたが、テスト結果をみるとコミュニケーション力の数値が低かった。建築家はたくさんの人と関わる仕事なので、これからは積極的にいろんな人と関わりたいです」

 同校は自ら問いを立てて調査や分析をし、結論を出す能力を育てるカリキュラム「未来考動塾」を今年度から始めた。三河一雄学習・進学指導部長は、こう話す。

「先行きの見えない時代だからこそ、生徒たちには学力だけではないものも伸ばしてほしい。テスト結果はそのための客観的な『ものさし』になると思います」

 複雑化、グローバル化する社会に必要とされる教育とは何か。時代の変化に対応すべく、生き残りをかけて塾業界の挑戦は続く。

週刊朝日  2017年6月23日号