作家・室井佑月氏は、ゴールデンウィーク中も安倍政権とメディアの関係についてウォッチする。

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(この原稿を執筆している)今はゴールデンウィーク後半。さすがに、「北朝鮮ガー!」と今にも戦争に突入しそうな煽り番組は減った。ほとんどのワイドショーが、穏やかな行楽特集を組みはじめた。

 前半には残り汁がまだあったけど。ある専門家の方が出て来て、北朝鮮が核実験をする「新たなXデー」を指定していた。

 この方、これまでに何度もXデーを指定し、外している。テレビからお呼びがかかる限り、当たるまでやるつもりか?

 それにしてもさすがに「報道の自由度ランキング72位」の国である。

「北朝鮮ガー」「ミサイルの先にサリンつけてー」と騒いだ御大将が、騒ぐのを一旦やめて休暇を取れば、それに合わせてメディアも報道を見合わせるのね。

 北朝鮮が我が国の御大将の都合に合わせてくれるのか、それとも我が国の御大将が北朝鮮危機を煽りすぎたのか。

 メディアはそこの部分を、山梨の首相の別荘までいってしつこく聞いてこなきゃ。北朝鮮とアメリカが……と緊張を煽りに煽っておいて、いきなりあの方が呑気にゴルフしている姿を見せられてもさぁ。

 そうそうあの方、外遊先のロシアからなんの成果もあげず手ぶらで帰って来た。その後、山梨の別荘にゴルフしに出かけるんだけど、その間、3日の憲法記念日に、

「2020年を新しい憲法が施行される年にしたい」

 と、ある集会にビデオメッセージを出した。

 ある集会ってのは、日本会議が主導する、美しい日本の憲法をつくる国民の会などの憲法改正集会だ。

 憲法とは権力者を縛るためのもの。それをまったく理解していなそうな、あの方が改憲をいいだすって悪夢でしかない。てか、あの方、2020年まで首相やるって? なに、やる気満々? それが一番の悪夢だわいな。

 ここまで調子づかせたのは、メディアのせいだ。

 
 山梨の別荘いって、あの方と日本会議の関係くらい深く突っ込んで訊いてこいよ。

 てか、あの方、ゴールデンウィークの間、ずっと疑惑の女房と一緒だった。「あなたの女房、説明責任も果たさず、なにやってんの?」くらい訊けばいいのに。それはみんなが知りたいことだろう。

 ゴールデンウィークが明けたら、国会で再び森友学園問題の集中審議をするみたいだ。

 けれど、またまた安倍首相が追いつめられたら、メディアは北朝鮮問題を扱うのかね? いやいや、今度は都議会議員選か。

 そうやって政府のアシストをすることが、どう国民のためになるというのだ。

 共謀罪に改憲に、この国が変わってしまうかもしれない大事な問題でさえ、その時にやらなくてもいい問題を前に持って来て、目隠しをしてしまう。さすが72位だ。あっぱれだ。

 安倍という新興宗教に加入していない人間は、メディアの欺瞞に気づいてる。

週刊朝日  2017年5月26日号

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室井佑月

室井佑月

室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

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