懲役10年で未決で拘束されていた480日を差し引いてくれるというから、実質的にはこれから8年半ほど、全国のどこかの女子刑務所に入れられることになる。

 石井俊和裁判長は、被告側が主張した「多重人格」に言及はしなかったものの、責任能力はあるとした。

 あらかじめ睡眠薬を用意し周到な計画を立て、ある被害者宅では、ガスコンロをつけたまま逃走し、被害者を一酸化中毒の危険にさらすなど、知能犯で犯意は強く、悪質性は極めて高いと述べ、また確認されているだけで、275万5千円の昏睡強盗を起こし、被害は甚大だと断じた。

 しかし、情状面として、反省、謝罪していること、母親が被告を支えると言っているところを挙げ、求刑より5年軽い判決を言い渡した。多重人格を装うというと、もう少し演技性の高い被告が予想されるが、実際に目の前に現れた神被告は、あまりにも貧相で、演技などする余裕もなく内面を切り刻まれ、その結果恐らく肉体までも深く病んでいるのが垣間見えた。(取材・文/萱野葵)

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