「ヤス(渋谷容疑者の愛称)は前妻と離婚して、現在の女性と同居するようになりました。不動産賃貸業と言っていますが、マンションの賃貸料収入で生活しています。昼間にマンションでよく見かけました。小さいころからよく知っていますよ。お父さんは郵便局員で、異父のお姉さんがいた。彼は高校卒業後、北海道に行ってそこで結婚したと聞いたけど、六実に戻ってきたときは一人でしたね」

 高校の同級生はこう話す。

「友達は少なかったみたいだけど、文化祭とかの学校の行事では積極的に活動していましたね」

 近所の60代女性は言う。

「上も下も前歯が数本ずつ抜けている。黙っていれば落ち着いた印象なんだけど、口を開くとフガフガした話し方になってしまう。そのせいかコミュニケーションを取りにくいように感じてしまう。ある人が『保護者会長なんだし差し歯をしなさいよ』と意見しても、聞かなかったらしい」

 犯人だったとしたら残虐な犯行に駆り立てたのは何か。改めて事件の経過をたどろう。

 リンさんが行方不明になったのは、3月24日午前8時ごろのことである。修了式の朝、いつものように学校に出かける姿を父親が見送った。しかし、午前8時40分になっても登校してこないため、学校が父親に連絡。交番に捜索願が出されたが、2日後の26日午前6時45分ごろ、リンさんの遺体が自宅から約12キロ離れた我孫子市にある排水路の橋の下で発見される。首には絞められたような痕があった。翌27日、遺体の発見現場から約18キロ離れた茨城県坂東市の利根川河川敷で、リンさんの赤いランドセルが見つかった。

 県警は死体遺棄現場の遺留物から採取したDNA型が渋谷容疑者のものと酷似していたことから、逮捕に踏み切った。リンさんが自宅を出てまもなく、車に連れ込んだと見ている。

リンさんはベトナム人の両親と弟の4人暮らし。3歳の弟の面倒を見るリンさんを、近所の人々は「人なつっこく、かわいらしい子だった」と口をそろえる。亡きがらとともにベトナムに帰国した父親のハオさんは、逮捕の知らせに怒りをあらわにした。

「子どもの見守りをしていた人が犯人なら、どうやって子どもを守ったらいいのかわからない」

週刊朝日 2017月4月28日号より抜粋