折り畳み式銃床では強度の面で銃剣格闘に不利だ。自衛隊が国産兵器を開発する常套句である「我が国固有の環境や運用に適した外国製がない」という便利な言葉があるが、89式は全く適合していない。

 国民の7割が都市部に集中し、市街戦が発生する可能性は極めて高い。固定銃床の89式は市街戦、室内掃討戦で不利である。多くの軍隊がアフガンやイラク等の戦訓を取り入れて市街戦を重視し、改良を加えているのに、未だに89式は改良もされずに、固定銃床のままだ。89式小銃は既に時代遅れだ。

 その上、陸自は実弾射撃も軽視している。

「自衛隊では小銃の実弾射撃が極めて少ない。かつて『たまに撃つ弾が無いのが、玉に瑕』という自虐的な川柳があったが、それは現在も変わらない。普通科(歩兵)の一線隊員でも年5回、平均千発程度、管理部隊などの非戦闘職種や上級幹部、兵站などの非戦闘職種、そして銃剣道の競技会の選手も射撃検定1回で50発程度、弾倉2個分以下しか撃たない」(元陸曹)

 これではまともな小銃射撃の技術は維持できない。

銃剣道という「ごっこ」よりも実弾射撃を熱心に行うべきだろう。

 陸自では実弾射撃や小銃の近代化を軽視し、精神主義と着剣突撃を偏重しているようにしか見えない。

 有事になれば旧軍同様に玉砕覚悟で万歳突撃を行い、隊員に犬死にを強要するのではないか。

 もうひとつ問題なのは高価な銃剣道の道具を隊員に買わせていることである。「予算が足りないとか、あれこれ理由をつけて30万円を超えるセットを、ローンを組ませて指定業者から買わせています。私も36万円のセットを買わされました」(元陸自1尉)

 銃剣道が重要かつ必要と考えているのであれば、予算をきちんとつけて、すべて官費で調達すべきだ。

 自衛隊では本来支給すべき被服や装備をこうして自腹を切らせて、指定業者から買わせている。

 これは指定業者と部隊長ら部隊幹部が組織的に癒着している可能性が疑われても仕方あるまい。

 多くの若い隊員やその親が、こういうところから自衛隊に不信感を持つのだ。

 中学はもとより、自衛隊で銃剣道を行うこと自体、メリットよりも害の方が多い。特に自衛隊では、銃剣道が国防を歪めている。即座に銃剣道を廃するべきである。

週刊朝日 2017年4月21日号