沖縄県北谷町に住む福地翔子さん(30)によると、にんじんを細く切り、卵と一緒に炒めた料理。家庭でよく食べられ、小中学校の給食にも出る。地元では、スライス用の「しりしり器」まであるという。

 2位の福島市は、するめと一緒に漬け込んだ「いかにんじん」が名物。おかずの一品や酒のつまみとして愛されている。購入額が大きいのは、こうした郷土料理も影響していそうだ。

 清酒は秋田市と新潟市が上位で、焼酎は九州が上位。これらは、家庭で飲むために買う酒の支出額だ。

 家計調査には外食のデータもある。外での飲酒代は、1位高知市、最下位名古屋市。岩中さんは「高知は仲間意識が強く、地域や親類で集まって外で飲食する文化。刺し身を盛った皿鉢料理を囲んで酒を飲む。対照的に、名古屋は節約志向が強く、外で飲まずに家で飲む文化です」という。

 喫茶代になると、名古屋市は岐阜市とともに上位になる。“モーニング発祥の地”とされる面目躍如だ。

「紡績産業が盛んな時代、多くの機械を置くため、工場内の事務スペースを極力減らした。商談は会社内でなく喫茶店でする文化が広がり、モーニングサービスが盛んになったようです。名古屋の人にとって、喫茶店は応接間や居間の延長の存在。休日朝になると、パジャマ姿の家族連れもよく見かけます」(岩中さん)

 家計調査を詳しくみると、地域の食文化が浮かび上がる。ネットでのお取り寄せなど、各地の食品を簡単に手にできる時代だが、飲食へのお金の使い方は今なお地域差が大きいようだ。

週刊朝日 2017年3月24日号より抜粋