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変革期の日本で“考える力”を 早慶のトップが若者に薦める本は?

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週刊朝日#読書

早大・鎌田薫総長が推薦する『大隈重信演説談話集』(右から2番目)と慶應大・清家篤塾長が推薦する『文明論之概略』(左)。本誌では他の2冊についても解説を行っている

早大・鎌田薫総長が推薦する『大隈重信演説談話集』(右から2番目)と慶應大・清家篤塾長が推薦する『文明論之概略』(左)。本誌では他の2冊についても解説を行っている

「読むことによって、知ることの何たるかを学べ」(ローマ時代の政治家・カトー)と言われる。ネット上でさまざまな情報を調べられる現代でも、若者が本から受ける示唆の大きさは変わらないはず。私学の雄ともいわれる“早慶”のトップに若者へ薦める一冊を聞いた。

■早稲田大 鎌田薫総長
『大隈重信演説談話集』(早稲田大学編、岩波文庫)

 僕らが学生の頃は乱読の時代でした。今でも印象的なのは、地方から大学に入った同級生が「東京の子はいろんなことを知っている」と、ショックを受けていたことです。彼は負けられないとばかりに、「俺は今日から岩波文庫を毎日読む」と宣言し、卒業までやり抜きました。今は数多く本を読んでも、自慢にならない時代。残念です。

“この一冊”というより、手当たり次第にいろいろと読むのがよいと思います。ただ、あえて一冊を挙げれば、昨年に出版された『大隈重信演説談話集』です。

 大隈は文章を書かないことで有名でした。一説によると、子どもの頃に「字が下手」と言われ、「じゃあ俺は書かない」とへそを曲げたらしいのです。福沢諭吉の本は読んだけれど、大隈の本は読んだことがない。そんな人が多いでしょう。

 この本の「青年に寄せて」「東西文明の調和」「理想を掲げて」などを読んでほしい。そして、特に読んで頂きたいのは「学問の独立」の箇所。私たち一人ひとりにとって、学問とは何か、大学とは何か、示唆に富む考えを述べています。

 今の教育は、大学の入学試験突破が最大の目的になっているきらいがあります。マークシート式試験は効率性、公平性の観点からはよいですが、唯一の答えを追求して知識優先、記憶中心の学び方が身についてしまいます。

 現代はそういった画一的な学びが通用しない時代です。今の日本社会は明治維新、戦後復興に続く、第3の変革期。将来的には現在の職業の半分以上がなくなると言われています。今まで通りの考え方にとらわれず、新しい時代を切り開く知恵や志、実行力に富む人間が育たないといけません。

 早大は、課題を発見して解決する力、考える力を養う授業を中心にしています。

 一方向で受動的な大人数の講義を改め、議論中心の少人数授業に力を入れています。全講義の48%が20人以下のクラスになりました。ボランティア活動やインターンシップなど体験型学習も増やし、年間約1万5千人が参加しています。

 OBの方々は「早稲田はそこまで面倒見がよくなったのか」と思われるかもしれません。昔の早大生は放っておいてもやりすぎるところがありましたからね。

 ただ、私たちは面倒をみているわけではありません。一人では見つけきれない数々の選択肢を、学生の前に提示しているだけです。

 早大に来る学生はぜひ創設者の思いを知り、ここで学ぶ意欲を抱いてほしい。「進取の精神」にあふれ、自立した精神と人間力を備えた若者に成長していき、社会へと巣立ってほしいですね。


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