――その後、妻は前夫と離婚。二人は一緒に暮らし始め、妻はデパートのジュエリー売り場で働きながら、学生だった夫を支えた。

妻:主人の存在が離婚の主な原因ではないんです。それ以前に「自立したい」という思いが強かった。前の夫にはすべておんぶにだっこだったので、自分で働いて外国で生活することに憧れたのかな。ぜいたくな悩みですけどね。

夫:あのころ日本からアメリカへの送金の額は限られていて、女房がいなければ勉強に専念するのは難しかった。感謝しています。あなたは売り上げ成績もトップだったんでしょう?

妻:そう。私はパッとその人の趣味がわかるから「あなたに似合うのはこれ」っておススメしか見せないの。そうすると「じゃあこれにする」って。素早いし、売り上げが伸びるしで、いつも褒められていました。

――75年に二人は結婚し、翌年に帰国。夫は大学助手として働き始める。

夫:留学中は「工学の世界で生きる」と決めていた。政治家なんて考えてもいなかった。でも、76年にアメリカの建国200年のお祭り騒ぎを体験して、「自分は日本人であることを、どれくらい誇りに思えるのか」を考え始めたんです。

妻:そのころから、だんだん政治家をイメージしてきたみたいです。

夫:わたしのような戦後世代は国を愛するイコール軍事力強化と考える人が多い。でも違いますよね。日本をもっと誇らしい、いい国にするために役に立てないかなと思い始めたんです。しかし、こういう性格ですからね、全然政治家には向いていないんですよ。

妻:そうそう。

夫:そのとき、女房が背中をポンッと押してくれたんです。「政治家になるなら、応援するわよ」って。

妻:私はプロデュースするのが好きだから「あなたのプロデューサーになってあげるわよ」って。

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