安倍首相はこのとき、「検討をさらに進める」と言葉少なだったが、3日後には前出の発言に転じた。

 皇室典範改正論を巡る民進党の強気な姿勢を政府筋はこう解説する。

「昨年8月のお気持ち表明以降、宮内庁関係者が民進党幹部に対し、天皇の“ご意向”を酌んだ退位、皇位の在り方を複数回にわたり指南しているようだ。特に野田幹事長は首相時代、女性宮家創設を含め皇位継承問題に積極的に取り組んできた。当時、野田政権に仕えた宮内庁関係者も複数いる。野田さんは幹事長就任後、『退位問題が最大の関心事』とやる気満々です」

 自民党幹部も「皇室は野田氏にはかなり親しみを持っているようだ」と警戒する。野田幹事長が主導し、民進党は昨年12月、女性宮家創設を含めた皇室典範改正を求める論点整理を発表。代表質問でも野田幹事長は「官邸と皇室、宮内庁は、しっかり意思疎通できているのか」と語気を強めた。

 安倍首相は内心、民進党の一連の動きに「腸(はらわた)が煮えくり返っている」(前出の政府筋)という。

 有識者会議のヒアリングに呼ばれた元最高裁判事の園部逸夫氏はこう指摘する。

「安倍首相は特例法でさっさと済ませて、本論の憲法改正発議がしたいから、国会論議を急いでいる。陛下はそんな首相に対し、好ましくない感情を抱いているのではないか」

 園部氏は2005年、小泉政権下で女性・女系天皇を容認する報告書を有識者会議座長代理の立場でまとめたが、こう悔やむ。

「06年1月、官邸で小泉首相、安倍官房長官(当時)らと食事中、小泉さんが『3月15日に女性天皇を認める法案を出します』とはっきり言った。その直後、秋篠宮家で男子の悠仁さまご懐妊が伝えられ、法案提出は見送られたが、こんなことになるなら、議論を続けていればよかった」(本誌・村上新太郎)

週刊朝日 2017年2月10日号より抜粋