<土筆(つくし)摘み野蒜(のびる)を引きてさながらに野にあるごとくここに住み来(こ)し>

 永田さんは、和歌には、様々な想いが込められているのでは、と見る。

 ひとつは、御所の自然への愛着。二つ目は狭い居住空間で生活を送る都内の人びとに対し、恵まれた環境にあることへの申し訳なさもかすかに伝わる。三つ目は、御所での生活の横には、いつも陛下がおられたこと。その幸せへの感謝だ。

「両陛下は、つねに言葉に対する慎み深さがにじみ出るような和歌をお詠みになる。『慎み』とは、言葉をおそれ、口にする行動への責任と自覚です。和歌は自分の思いを表現する言葉の模索を続ける作業。だとすれば、国民の象徴たる天皇、皇族方が和歌を詠む意味も、そこにあるのではないでしょうか」(永田さん)

 平成の天皇、皇后両陛下は和歌を詠み、平和への祈りを捧げながら、ひたすら国民に寄り添い続けてきた。2年後には新天皇、皇后のもとで「歌会始の儀」が催される見通しだ。

 おふたりは、どのような和歌を詠むのだろうか。

週刊朝日  2017年1月27日号より抜粋