私が当直を担当した大みそかの夜、陛下の呼吸が止まりました。看護師がお胸をタンタンとたたくと、息が戻りました。「ああ昭和64年を迎えた」。そんなことを考えていました。そして迎えた1月7日の午前6時33分。心電図のモニターがツーとまっすぐになり、陛下の心臓が止まりました。昭和天皇がそうであったように、昭和の幕は、ごく自然に静かに降りてゆきました。

 それから数年で皇室の姿勢はずいぶんと変わりました。いまの天皇陛下は平成15年に前立腺がん、平成24年に心臓のバイパス手術を受けております。いずれも手術の内容やリスクについて、両陛下には十分な説明とインフォームド・コンセントがなされました。ご自身の病状について世間にもきちんと説明なさっています。

 医師の立場から拝見しても、皇室の在り方は、時代によってさまざまであるものです。

週刊朝日  2017年1月6-13日号