マリンタワーを背景に走るランナーたち(横浜市) (c)朝日新聞社
マリンタワーを背景に走るランナーたち(横浜市) (c)朝日新聞社

 記者生活約10年、職業柄、夜のつきあいが多く、わかっちゃいるけど暴飲暴食がやめられない。そう言われてみれば、この仕事についてから体重が10キロ増えた。腰回りは90センチを超え、堂々のメタボ体形だ。

「このままではいけない……」。数年前から危機感はあったが、酒を飲んでは忘れることの繰り返し。久しぶりに会う友人から、あいさつ代わりに「おなか出たね~」と言われることも日常茶飯事となってしまった。

 記者は現在、37歳。中年真っ盛りとはいえ、まだ間に合うはず。ランニングを始め、かつての体のキレを取り戻すのだ! そう自分に言い聞かせたのが、今年9月だった。

 その結果は……。2日連続で5キロを走ったところ、下半身を中心に激しい筋肉痛が襲い、膝を痛める始末。走るどころか、階段の上り下りもつらくなってしまった。惨敗だった。

 中年男性がランニングを始めることは、かくも難しきものか。そこで、ランニング学会会長で、市民ランナーのコーチもしている大阪体育大学名誉教授の豊岡示朗さんに話を聞いてみた。

「ランニングは、基礎となる筋力が最低限必要です。ですが、長年運動不足の人は走るために必要な筋肉が衰え、『ロコモティブ症候群』になっています。激しい運動を突然始めると、膝や足首などに痛みを引き起こしてしまうのです」

 メタボだけでなく、自分の知らない間に「ロコモ」にもなっていた……。もはや笑い話にすらならない。

 日本整形外科学会によると、予備軍も含めたロコモ人口は4700万人。40代以上の5人に4人が該当する。ロコモの人は年をとると要介護になる危険性が高く、適度な運動が対策として推奨されている。

 豊岡さんは言う。

「ランニングは、ダイエット効果だけではなく、ストレス解消、高血圧や糖尿病の予防にもつながります。だからこそ、いきなり長い距離を走るのではなく、少しずつ負荷を高めていかなければなりません」

 初めから体力に見合わないトレーニングをして、すぐにランニングをやめる人は多いそうだ。

 スポーツメーカーのデサントが実施したアンケートによると、ランニングやジョギングを1年以上継続できた人は、全体の23.6%だけだった。なかでも、半年以内に断念した人は、毎日走るなど高い頻度で運動していた人が多かった。

 ところが、最初から4日に1回、つまり週1~2回のペースで走る人に限ると、43%が1年以上ランニングを続けていた。

 アスレチックトレーナーで、『やってはいけないランニング』の著書がある鈴木清和氏は、こう話す。

「そもそも、ランニングはとても過酷なスポーツ。だから、走るのは週2回で十分です。量は少なくても、質のいいトレーニングを続ければ、半年後にはフルマラソンを完走できるようになりますよ」

週刊朝日 2016年12月23日号より抜粋