本田(左)の心中はいかに (c)朝日新聞社
本田(左)の心中はいかに (c)朝日新聞社

 サッカー日本代表は、W杯アジア最終予選で、前半戦最大の山場といえた首位サウジアラビアとの対戦を2−1で制した。もし負ければ、W杯出場圏外のグループ4位に転落する可能性もあったものの、ひとまずプレーオフに回らずW杯への出場権を獲得できる2位以内をキープした。

 これで全10試合中5試合を消化。初戦のUAE戦に敗れてからはメディアでもハリルホジッチ監督の進退問題がにぎわいを見せていたが、ひとまず騒動は収束に向かいつつある。

 一方、この試合で注目を集めたのは、後がない状況に追い込まれた指揮官の崖っぷち采配だった。

「何人かの選手はトップパフォーマンスではない。監督によっては、信頼して使い続けるだろう。しかし、私は躊躇(ちゅうちょ)なく、より良い選手を選んだ」

 負ければ解任も免れないハリルホジッチ監督は、2010南アフリカW杯前後から長く代表の主力として活躍してきながらも最近は所属クラブで出場機会を失い調子を落としていた本田圭佑、香川真司、岡崎慎司の“BIG3”をスタメンから外す決断を下した。

 すると代わって出た選手がフレッシュな動きでチームを活性化し、清武弘嗣は自ら獲得したPKで先制弾を決めただけでなく、攻撃の司令塔としての役割を全う。大迫勇也はゴールこそなかったが、最前線で攻撃の軸として機能。そして絶好調の原口元気は最終予選4試合連続ゴールと、主役交代をも印象づけた。

 これまで絶対的エースだった本田は、サウジアラビア戦の前にスタメン落ちのうわさが流れると、「オレはこれまで自分の力で道を切り開いてきた。メンバーは監督に選ぶ権利があるが、オレは(先発にふさわしいか)自分で判断できる」と豪語。だが、その思いは指揮官には届かず屈辱のベンチスタートだった。後半頭から投入され意地は見せたが、圧倒的な存在感を発揮するまでには至らず、試合後は無言を貫いた。

 本田は今季、所属するACミランで81分(3試合)しかプレーしておらず、ハリルホジッチ監督はこうも言った。

「試合のリズムが戻らなければ、これからも同じことが繰り返されるだろう」

 価値ある1勝は、皮肉だが同時に一時代の終焉(しゅうえん)を強く予感させることとなった。

週刊朝日 2016年12月2日号