「乾麺の匂い、カップラーメンだ。匂いの強さからして多食している」。あらやだ、人間って米ばっかり食ってたら、米の匂いがするのかしら。「血のついた鉄の匂いがする。鋭くとがった鉄。つまり凶器はクギだ」。匂いで凶器の形状までわかってしまう。これまじで、警察犬どころか鑑識いらず。その嗅覚で、あっという間に犯人(劇団ひとり)の逃走先まで特定する華岡。「地下鉄だよ。犯人は線路に降りている。しかも廃駅だ」と、百歩譲って匂いで場所を識別するのはよしとしよう。でも犯人がどう動いたかまで見えちゃうのは、もはや阿部ちゃんがやってたドラマ「トリック」の「どんと来い、超常現象」。

 華岡が万能すぎて、相棒役の刑事・小向(香川照之)の見せ場がほとんどない。Eテレの昆虫番組では、カマキリ姿ではじけてた香川も、ここでは虫の息? 犯人に捕まえられ、爆弾をぐるぐる巻きにされる展開だ。しかしすぐには爆破せず、華岡に花を持たせる犯人。

「匂いだけで、爆弾の回線を切ってみろ」。

 爆弾から出る4本の回線。さあ、鼻男の見せ場ですよ。「赤、スーッ(匂いを吸い込む音)。青、スーッ。緑、スーッ。黄色、スーッ」。動揺する犯人。「赤だ(ニッコリ)」。パチン。正解です! 嗅いでるだけで爆破回避。どう見たって爆笑コントなこのシーンを、おしゃれジャズBGMと阿部ちゃんの顔面力で、緊迫場面に仕立てあげた力技。感服です。

週刊朝日  2016年11月11日号