東京10区の補選で二階俊博自民党幹事長、下村博文都連会長と談笑する小池知事 (c)朝日新聞社
東京10区の補選で二階俊博自民党幹事長、下村博文都連会長と談笑する小池知事 (c)朝日新聞社

 迷走する豊洲問題で真相を知る“キーマン”として注目される石原慎太郎元東京都知事(84)が10月12日、久々にメディアの前に姿を現した。

 石原氏はこの日、盟友の亀井静香衆院議員らとともに靖国神社を訪問。戊辰戦争や西南戦争で「賊軍」とされた人々の合祀を申し入れたのである。

 だがこの日、メディアの目は豊洲問題で「賊軍」となった石原氏に集まった。前週に小池百合子都知事(64)が豊洲の「盛り土問題」について石原氏に経緯を尋ねる文書を送っており、石原氏の反応が注目された。

 宮司との面会を終え、神職らに体を支えてもらいながら覚束ない足取りで靴を履き替えた石原氏は、玄関前に群がる報道陣の呼びかけを不快そうに手で振り払うと、無言で車に乗り込み、去っていった。

 そして14日、小池知事の元に届けられた石原氏の書簡は、まさかの「ゼロ回答」だった。

「自分は聞いていないとか、覚えていないという回答でした。(略)色々なご功績を無になさらないようにしていただきたい」(小池知事)

 当初は石原氏から小池知事に情報提供のための会談を申し入れていた経緯があるだけに不満げな様子。

 しかし、石原氏側近の副知事として都政で「剛腕」をふるった浜渦武生氏は驚くべき証言を本誌にした。

「地下の空洞については、石原さんも知っていたと思う。いちばん知っているのは中央卸売市場長で、歴代の市場長は塚本直之氏以外は『知らない』と言っているが、そんなはずはない」

 浜渦氏は2001年、豊洲を市場予定地として東京都が買い取ることを決めた「基本合意」を、土地の所有者だった東京ガスとの間で取り交わした。まさに、交渉の「当事者」である。そもそも豊洲の土地を買い取ることは、石原氏が知事になる前から決まっていたという。

「豊洲への移転案は青島幸男知事の時代に浮上していた。1999年に石原氏が都知事になると、当時の市場長や副知事ら都の役人が『豊洲しかありません』と説明し、もう決まっているような話でした」(浜渦氏)

 東京ガスとの交渉は当初は別の副知事らが窓口になっていたが、難航。浜渦氏に白羽の矢が立った。

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