自宅近くの病院を受診したところ、肩関節周囲炎と診断され、痛み止めと湿布薬をもらった。しかし、左肩の痛みや動かしづらさが続いたため、3カ月ほどで別の整形外科クリニックを受診。理学療法士によるリハビリを受け、痛みは改善した。

 しかし、半年ほど続けて腕は挙がるものの、肩の動きは一向に戻らなかったため、16年1月に筒井医師をたずねた。

 筒井医師は、田中さんに肩を動かしてもらい、痛みの様子をみた。すると田中さんは肩甲骨(けんこうこつ)を支える、背中の表層にある筋肉の僧帽筋(そうぼうきん)を中心とする痛みを訴えた。

「田中さんは肩関節周囲炎に加え、腱板の一部が断裂していました。この痛みをかばっているうちに、肩から胸の上部全体の運動性が低下したと考えられます。前に受診していた病院の治療により、肩関節周囲炎は改善していたものの、肩周囲や体幹の筋肉が硬くなったままでした」(同)

 そこで、筒井医師は、僧帽筋への過度な負担を抑え、体幹を中心に運動性を向上させる運動療法をおこなった。椅子に座り、腕をまっすぐに、指先を斜め上方向へできるだけ伸ばす運動などだ。脇から下が伸びることを意識しておこなう。すると2カ月後、初診時には、耳から離れた位置までしか挙げることができなかった左腕が、耳につけてまっすぐ天井に向けて挙げられるまでに肩の動きが回復した。

 筒井医師は治療に加えて、次のような肩の負担を軽減する、日常生活のアドバイスをした。

「左肩が痛むなら、立ったり歩いたりするときに、へその少し右側で、左手の親指だけベルトの中に入れて左腕を休ませる」「椅子に座ってパソコンの作業をする場合には、ひざの上に枕を置く。痛むほうの腕を軽く曲げてその枕の上に置いて、ひじが浮いた状態にならないようにする」

 小さな工夫だが、これによって腱板の負担を減らすことができるという。

週刊朝日  2016年8月12日号より抜粋