御厨:戦略は成功しています。参院選の32ある1人区で野党共闘を調整できたことは大きいですね。

松原:もともと自党だけで勝てるとやってきましたが、ジリ貧になって、戦略を変更。決断は立派で、躍進したから、B評価ですね。

御厨:続いて、おおさか維新の会。渡辺喜美前衆院議員や田中康夫元長野県知事など「おおさか」に全然関係ない人を集めています。

松原:地元ではさすがに問題になっているようですが、おおさかを外すと「維新の会」になってしまう。

御厨:これも過渡的形態ですね。判定のつけようがないですが、今後に期待してD評価です。

松原:続いて、吉田忠智党首が落選危機と言われる社民党です。

御厨:追い込まれていて、党が存続できるかどうかの瀬戸際まで来ているので、E評価ですね。

松原:さて、生活の党です。野党共闘では、小沢一郎共同代表が前面に立ち、頑張った。ですが、政治団体「国民怒りの声」を立ち上げた小林節氏に抱き付こうとしたら、共倒れは嫌だと断られた。以前では考えられない事態になりました。

御厨:全部断られているので、E評価です。

松原:中山恭子氏が代表の「日本のこころを大切にする党」は、どうでしょうか。

御厨:もともと次世代じゃない人たちの、次世代の党の系譜で、次は消えているかもしれない。ですから「展望見えず」ですね。

松原:「日本を元気にする会」も、松田公太氏が政界引退を決め、アントニオ猪木氏が代表になりました。「展望見えず」ですね。

御厨:次に新党改革ですが。

松原:荒井広幸氏が郵政民営化に反対したときの気持ちはよくわかる。ただ、舛添党の印象が強すぎて。どうしたらいいか。

御厨:「展望見えず」ですね。それにしても、安倍首相は同じ政策でも良いと言ったり、悪いと言ったり……。やると言ったり、やらないと言ったり……。言うことがクルクルと変わっているのに、他党が転んでいるおかげで、食言だと追及されないことはすごいですね。

松原:一貫しているのは憲法改正だけ。アベノミクスも、日本銀行が国債を買い漁り、クスリを打ち続けているようなものですからね。安倍首相の人徳でしょうか。

御厨:いや(笑)。安倍首相のこれまでの実績から言うと、クルクル言うことが変わっても、最後の決断力だけで勝ってきました。首相に再び返り咲いたことが、ある意味で捨て身。だからこそ、強いんです。ただ、捨て身の精神が薄れ、消費増税と衆参ダブル選挙を決断できなかった。そういう意味で、今後普通の政権になっていくかもしれません。

週刊朝日 2016年7月1日号より抜粋