こうした人脈をたどると、民間憲法臨調での議論が、自民党の憲法改正草案に少なからず影響しているといえるだろう。

 そもそも、自民党が12年4月に発表した憲法改正草案には、日本会議が主張する価値観が如実に盛り込まれている。

<日本国民は、国旗及び国歌を尊重しなければならない>(第3条2項)

<国民の権利については、公益及び公の秩序に反しない限り、(中略)最大限に尊重されなければならない>(第13条)

<家族は、互いに助け合わなければならない>(第24条)

 国旗・国歌の尊重、国民の義務の強調、男女共同参画社会への反対と、伝統的な家族形態の重視……これらは日本会議のホームページで主張されている思想と、ほぼそのままリンクする。

 日本会議の影響力が及んでいるのは、単に政権に対してだけではない。『日本会議の研究』(扶桑社新書)を出版した著述家の菅野完(たもつ)氏は、日本青年協議会の機関誌である月刊誌「祖国と青年」の内容を検証した結果、こんなことに気がついたという。

「『祖国と青年』のバックナンバーをつぶさに読んでいくと、毎年定期的に必ず扱っていた北方領土の話をある時期に突然やらなくなった。同じころ、世間が竹島や尖閣諸島の問題で騒ぎだしますが、『祖国と青年』がどこよりも早く火をつけていました。冷戦が終わってソ連を敵と言えなくなったら、今度は韓国や中国を持ち出してくる。『祖国と青年』に載った話が、数カ月後の『正論』や産経新聞に出てくる。いわば、ネタ本になっているのです」

 つまり、日本会議の中核である日本青年協議会の設定したアジェンダが保守陣営の論調を形成してきたというのである。

 ただ、日本会議が実際に安倍政権に対してどれほどの力を持っているのかは、目下のところ意見が分かれる。日本会議に所属する自民党国会議員が言う。

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