作家・北原みのり氏の週刊朝日連載「ニッポンスッポンポンNEO」。オジサン社会で、女の声を通すための方法がわかったという。
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女友だちと会うと、なぜか三浦瑠麗さんの話題になる今日この頃。ご存知のとおり今をときめく国際政治学者で、東京大学卒業、30代、美人。私たちの話題は残念ながら「ご活躍素晴らしいよね」というものではなく、「なぜオジサンは三浦瑠麗さんが好きなのか」である。そうですよね。オジサンは右も左も関わらず、メロメロですよね。
確かにテレビ討論などを見ていると、三浦瑠麗さんの存在感は圧倒的だ。言葉は悪いが、たとえご発言に中身がなくても、自信に満ちた調子で場を制する様子は、対論側が視野狭く、物知らない人に見えてくるほど。
先日、友人が、大発見をしたという感じで言った。「会社で三浦瑠麗を真似してみた」と。ふだん、会議でオジサンたちに疎ましがられるのを感じている彼女。ものは試しにと、テレビ討論の三浦瑠麗さんの話法を研究したのだという。
それはまず顎を引き、首を傾け、上目遣いで相手をじっと見つめることからはじまる。語る時も同様、首を傾げたまま、斜め下から目力強めに、でも口元には笑みを忘れず、かといってそれは媚ではなく寛容と不敵さを絶妙に混ぜること。そして発言する時も、自分の意見をまず述べない。まずは「◯◯さんが仰ることはごもっともなんです」と肯定した上で、「◯◯さんが仰るのは、こういうことですよね」と頼まれてもいないのに解説をし、それから「ただ私が申し上げたいのは2点です」と論点の数を言ってから意見を言う。
彼女によれば、美人じゃなければ無理なのではないか、若くなければ無理ではないか、との心配は無用だという。つまり強く言う女の言葉には自動的に耳がふさがってしまうオジサンも、まず肯定され、自分の意見を解説されると、後にどんなに否定されても気がつかないらしい。
さらに彼女が言うには、これまでビジネスウーマンの間で御法度とされてきた腕組みイン・フロント・オブ・オジサンもOKとのこと。なぜなら「三浦瑠麗さんもやっていたから」。腕組みしながら首を傾け黙っていると、何故か話が通りやすくなるという。オジサンは女のぎゃんぎゃんを嫌うが、とはいえ女の沈黙は怖いのだ。ここでは腕組みししゃべるのではなく、腕組みし黙るのがポイント。ということで、会社で疎まれる傾向のある女性の皆さん、試してみてください。
女が理詰めで怒り、痛みを訴え、それはあ~た女性差別よ、と批判しても「ヒステリック」だとか「誹謗中傷だ」と逆切れする(最近の国会でそんなことありましたね)オジサン社会で、女の声を通すのは難しい。フェミを名乗った途端に危険人物扱いされる男尊女卑社会で、オジサンに一目置かれる女の技に、社会に怒り続けてきた女たちはため息をつきつつ、首を傾げ斜め下から上目遣いで語る術を……学ぶべきかどうか検討中です。
※週刊朝日 2016年6月3日号