青山:僕はきちっとしたことがぜんぜんダメでして。きちっとして見えますか。

林:見えますよ。今も自転車で走るんですか。

青山:ええ。1台の値段が3桁とか、そういう自転車が何台かあって、取っ替え引っ替えしています。

林:えっ。さっき「お金がない」っておっしゃってたけど。

青山:だから、お金がないわけです。これでいかにきちっとしてないかがわかると思うんですけど(笑)。

林:作家にはちょっと売れるとすごい外車を買ったりする人もいるから、自分にとってのオモチャみたいなものが必要なのかもしれない。

青山:フリーの人間は、どこか過剰なものがないと組織の人間に対抗できないと思うんです。林さんは、こう言っちゃなんですけど、過剰なものだらけですよね(笑)。着物とか。

林:そう、着物。また始まっちゃって、自分でも気が狂ってるとしか思えない(笑)。

青山:着物って際限がないでしょう。自転車とはケタが違うし。

林:着物には本当にお金を使いました。でも、これまでは何とかやってこれましたけど、今は出版不況、構造不況ですから。本当にどうしたらいいか……。

青山:幸か不幸か、僕は67歳ですし、あと何年か食いつなげれば死ぬだけだからいいですけど。

林:そんなこと言わないでくださいよ。私は瀬戸内寂聴さんを見てるから、あと30年だと思いながら生きてますよ(笑)。

青山:自分はいいとしても、若い人にとっては、大問題ですよね。小説家として家族を養っていくとか、ちょっと考えられないですね。

林:青山さんのように別の業界で活躍されてきた方に、活路を見いだしていただきたいですよ。

週刊朝日 2016年5月6-13日号より抜粋