「薬の飲み残しはありませんか?」(※イメージ)
「薬の飲み残しはありませんか?」(※イメージ)

 医療機関の処方箋(せん)を持っていった調剤薬局で、薬剤師から「薬の飲み残しはありませんか?」と聞かれることがある。「調剤報酬改定」で薬剤師による残薬確認が始まって4年。“減らせ残薬”の効果はあがっているのか。

 高齢者の残薬の問題の一つは薬の数の多さだ。循環器内科医で東京都健康長寿医療センター顧問の桑島巖医師はこう話す。

「高齢者の多くは高血圧や糖尿病など慢性疾患を複数持っていて、さらに眠れない、便秘、おしっこが近いなど、さまざまな症状を抱えている。降圧薬と睡眠薬、痛み止め、胃薬というのは、高齢者への処方で多いものですが、これだけですでに4剤。ほかの慢性疾患が加われば、もっと薬を飲まなければなりません」

 降圧薬や血糖降下薬などの薬では、一つの薬の量を増やすと副作用が出やすいため、多剤併用にしているケースもある。

 持病が複数なら、かかる診療科も複数になる。その結果、同じ成分が重なったり、「抗菌薬と胃薬」のように、逆に効果を弱めてしまう薬が処方されてしまったりするおそれもある。「お薬手帳」があれば確認できるが、医療機関ごとに2、3冊持っているようなら、チェックしきれない。

 薬が増えるのは、高齢者が育ってきた時代も関係する。認知症患者を中心に在宅医療を担う、在宅療養支援診療所たかせクリニックの髙瀬義昌医師が解説する。

「健康保険の変遷のなかで、高齢者医療がすべて無料だったときがあります。その時代を知っている高齢者は、“薬はもらっておいたほうが得”と思うようです」

 取材では、痛み止めをもらいに来た患者が、医師から6日分しかもらえなかったことに腹を立て、「全然足りない」と薬剤師に不満を漏らした例もあった。

 高齢者の心理的な問題も影響している。「何かあったときのために」と薬を多めにもらい、保管しておくのだ。髙瀬医師は言う。

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