マスコミは、不適切発言があるとそれをバッシングし、テレビには偽善系コメンテーターがあふれている。「公的な場面ではそう言わなければならない、そういう振る舞いをしなければならないという偽善強要社会めいてきている」のが現状だと。

 しかし問題はそう単純ではない。いま「偽善」には二つの諸相がある、と小田嶋隆は指摘する。「善たることを偽装する」旧来の意味のそれと、もうひとつ「偽善を憎む者としてふるまう」一段階屈折した偽善である。

 偽善という言葉がまずわかりにくい。小田嶋は3年前に書いた自身のツイートを紹介する。≪「偽善者ぶる」という言い回しを時々見かけます。「偽善者」が「善人ぶる」なので、「偽善者ぶる」は「善人ぶるぶる」になります。間抜けです≫。いいねえ、善人ぶるぶる。笑いました。

週刊朝日 2016年2月19日号