このように決まりきった画像のパターンを認識する能力はAIのほうがはるかに優れている。決まったパターンと言うと税務や会計も同様だ。

「米国では良い税理ソフトができて税理士の雇用が失われたという事例がある。同様に数値や定型的な文書を扱う会計士もAIに代替されていくでしょう」(駒沢大学の井上智洋専任講師[マクロ経済学])

 都内の投資ファンドに勤務する公認会計士の男性(34)は、「会計士は有価証券報告書など書類をチェックするという単純作業もしていますが、そういった作業はAIに代替されても仕方がない」と言う。

 井上氏はこう予想する。

「数字を扱う金融系の仕事はAIに取って代わられやすい。例えば、日銀総裁はAIのほうがよいかもしれません」

 教育界も例外ではない。

 最近は、ネットを使ったeラーニングや大学などの講座をネットで無料で受けられるMOOC(ムーク)の利用が広がりつつある。

「ただ教えるだけの教員はAIによって淘汰されていくでしょうね。大学教員の大きな特徴は、大教室の中で反応のいい学生を見つけてその学生の表情を見て学生の理解度を把握しながら、もっと易しく言い直そうといった、学生たちに合った授業ができる点です。ところが、それさえもAIは代替できるのです」(前出の松原教授)

 パソコンのカメラを使った画像認識とAIを使うことで、学生一人ひとりに合った授業ができるようになればディスプレーの中の教員で十分ということだ。

 さらに甘利明前大臣のスキャンダルで揺れた国会も不要になる時代が来るかもしれない。政治家の仕事は支持者や役所などとの打ち合わせがほとんどだ。

「政治家は、異なる価値判断の中から限られたリソースを配分することが本来の仕事。AIで価値判断の評価システムができるようになれば、AIが政治家の役割を果たしたほうがよい社会になるでしょう」(同)

(本誌・鳴澤 大、長倉克枝)

週刊朝日 2016年2月12日号より抜粋