民主党の岡田克也代表が、共産党に夏の参院選での“自主的降板”を促した。野党としてまとまろうとしない岡田代表に作家の室井佑月氏は呆れる。

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 1月16日付の産経新聞によると、

「民主党の岡田克也代表は15日、夏の参院選1人区の協力に関する共産党との協議について『現時点では特にない』と述べ、自らは協議を呼び掛けない考えを示した」

 そう都内で記者団に語ったらしい。ほんとかよ。

「岡田氏は15日、BS朝日番組の収録でも『共産党が候補を出せば自民党を利する。野党が複数立てるのは愚策だ』と“自主的降板”を迫った。その上で『(野党統一)候補が共産党の支持を受けた結果、票を減らす可能性もある』と言い切り、『共産アレルギー』を隠そうとさえしなかった」

 とも書かれていた。証拠の残るテレビでもしゃべっているから、ほんとだわ。

 自民党じゃなく、なぜ共産党と戦おうとしている?「共産党が候補を出せば自民党を利する」って、それってあっち側がよく使ういいまわしじゃん。

 イスラム国(IS)の人質事件の時、「今安倍政権を批判するのは、ISを利するだけ」とかさ。テロが怖いっていっただけで、「テロに怯えることはISを利するだけ」と、ある著名人にいわれたっけ。

 安保法案に反対したときもそう。「そういう発言は、中国を利するだけ」だとか。

 なんでそうなる? ISと戦う有志連合に積極的にかかわることも、集団的自衛権を行使可能にすることも、いいことだけじゃない、デメリットの話もないと変でしょう?

 
 つまり、判断材料をもっとくれといってる。が、「……を利するだけ」という言葉に潰される。

 とにかく、民主党の岡田代表にはがっかりだ。

 戦争法を廃止する、立憲主義を回復する、その2点の共通した意思で、安倍政権を倒そうとする野党がまとまるのはそんなに難しいことなのか?

 今後の選挙で、国民が示してほしいのは、そういったわかりやすい構図だ。

 岡田さんは共産党と組むと、民主党支持者で共産党が嫌いな人が離れると思っているみたいだが、民主党支持者で共産党が嫌いな人は何%くらいいる? そして、共産党とは絶対に組めないといっている議員は何人いる? そもそも現在、民主党の支持率は、自民党の支持率と比較にならない。多数を占める無党派層から票を集めることを考えなきゃ、絶対に勝てないっつーの。

 どうせなら、党内で公開討論会を開いてよ。戦争法廃止、立憲主義の回復、安倍政権打倒、多くの国民が望むそれらのことより、共産党が嫌いだからと瑣末なことをいっている議員の顔を見てみたい。

 それはいち有権者として、選挙のときの判断材料になる。

 あーあ、最大野党の党首である岡田さんがこんなんじゃ、恐ろしく強い安倍政権を倒すなんて、なんだか夜見る夢のような話の気がしてきたわ。そう感じ、振り上げた拳を下ろす人もいるんじゃないか。

週刊朝日 2016年2月5日号

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室井佑月

室井佑月

室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

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