<名目GDP(国内総生産)は28兆円増え、500兆円を超えました。雇用は110万人以上増えました。有効求人倍率は23年ぶりの高い水準になっています。そして、今年も過去最高の企業収益を更新しています。賃上げは17年間で最高。経団連の調査では、冬のボーナスは過去最高となっています。日本経済は、デフレ脱却まであと一息というところまで来ました──>

 初売りなど景気のいい場面が報道されると、「景気回復した」と錯覚を起こしてしまいがちだが、「アベノミクスの実態は、一部の富裕層しか恩恵を受けない構造になっている」と言うのは、エコノミストの中原圭介氏。

「アベノミクスはデフレからの脱却、富の拡大が目的でしたが、今後もインフレ経済にするのは難しいでしょう。円安や株高で潤ったのは大手企業や富裕層だけ。全体として実質賃金の低下を招き、格差を拡大させた。庶民の生活水準の悪化を考えれば、アベノミクスは完全に失敗だったことがわかります」

 安倍政権は失敗を認めるどころか、「アベノミクスは第2ステージに移る」と言い、昨年9月、“新3本の矢”を打ち出した。

「経済失政をごまかそうとしたとしか考えられません。今までの3年間を検証し、日本をどのように立て直すのか。安倍政権は経済政策を根本から考え直す時期に来ている」(中原氏)

 参議院選挙がある今年、安倍政権が行ってきた経済政策を見極める必要がある。

週刊朝日  2016年1月22日号