『下流老人』著者藤田孝典ふじた・たかのり/1982年生まれ。NPO法人ほっとプラス代表理事。聖学院大学人間福祉学部客員准教授。厚生労働省社会保障審議会特別部会委員。著書に『ひとりも殺させない』など(撮影/写真部・堀内慶太郎)
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『下流老人』著者
藤田孝典
ふじた・たかのり/1982年生まれ。NPO法人ほっとプラス代表理事。聖学院大学人間福祉学部客員准教授。厚生労働省社会保障審議会特別部会委員。著書に『ひとりも殺させない』など(撮影/写真部・堀内慶太郎)

 今年の干支は「丙申(ひのえさる)」。激しく燃え広がる意味があり、「革命」の年とも言われる。『下流老人』著者の藤田孝典さんは、高齢者に絶望感が広がると2016年をこう予測する。

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 2015年は、高齢者の貧困問題に迫った『下流老人』(朝日新書)が20万部も売れ、それに続くように高齢者をテーマにした本が続々と出た年でした。それで、みんなが少しずつ意識するようになった。世の中に問題提起ができた年だったと思います。

 でも、政府の政策がこのまま変わらないならば、16年も「下流老人」は増え続け、悪化の一途をたどるばかりです。今は、下流老人は600万~700万人(65歳以上3300万人×22%)。でも、この先10年、20年後には、高齢化に比例して増加し、目も当てられない状況になるでしょうね。

 たとえ今、平均的な生活をしている人でも、高齢に伴い、病気の治療や介護などが必要になれば、誰しも下流になってしまう可能性があります。

 だから、「このままでは苦しい、生活が立ちゆかなくなる」と、政府に国民の声を届けなければいけない。最大のチャンスは、選挙です。16年は参院選がありますよね。自分が生活をどう改善したいのか考え、選挙を前に声を上げるのは絶対に必要なことです。

 待っているだけではだめ。実は、高齢者の貧困問題が顕在化しなかったのは、当事者が「これでいい」とか「貧しいのは自分が頑張ってこなかったから」と思って、やり過ごしてしまうからなんです。自ら声を上げて訴えないと、税金が新型輸送機オスプレイに変わってしまいますよ。

 政府は、標準程度の所得を保障するとか、住宅を無償にするとか、抜本的な改革をしないと、未来は絶望しかないでしょうね。

 ただ、希望もあります。政府は15年末、低所得の高齢者ら1250万人に3万円を配ることを決めました。「バラマキ」だと批判もあるし、3万円を配るだけじゃ何の解決にもならない。でも、1250万人も低年金の高齢者らがいると国民みんなに「見える化」しました。これをきっかけにさまざまな政策が動く可能性はあります。

 絶望的な未来を希望に変える。そのためにも、この一年は重要になりそうですね。

週刊朝日 2016年1月15日号