不安を残す吉田沙保里 (c)朝日新聞社
不安を残す吉田沙保里 (c)朝日新聞社

 金メダルに最も近い競技の一つが女子レスリング。前回のロンドン五輪より階級が二つ増え、メダル量産も期待される。

 53キロ級の吉田沙保里(33)と58キロ級の伊調馨(31)には前人未到の五輪4連覇がかかり、48キロ級には2013年から世界選手権を3連覇している登坂(とうさか)絵莉(22)という新星も現れた。

 絶対的な強さを見せているのが伊調だ。15年の世界選手権では、初戦から相手に1ポイントも許さずに完全優勝。日本レスリング協会の高田裕司専務理事も、

「全競技の中で最も金メダルの可能性が高い。ケガさえしなければ、いや多少のケガなら問題ない」

 と、太鼓判を押す。

 登坂はリオが初の五輪。「東京も出たいが、いまはリオで金を取ることだけを考えている」

 と言い、目の前のメダルだけを見据えている。

 実は、気がかりなのは吉田だ。階級区分の変更で従来の55キロ級がなくなり、53キロ級で出場する。2キロとはいえ、減量は楽ではない。

 世界選手権では、決勝で1ポイント差で辛勝して13連覇を決め、涙を見せた。

「吉田が五輪以外で涙を流したのは初めて。それだけ苦しかったのでしょう。年齢的な衰えが出ても不思議ではないが、体重を落としたことで、武器であるタックルのパワーがなくなりつつある」(関係者)

“霊長類最強”とまで言われたエースに一抹の不安が残っている。

週刊朝日  2016年1月15日号