

アダチンが足立区の文化・芸術をPRするための公式キャラとして華々しく登場したのは、2007年のこと。しかし……。
新しく就任した区長の意見で、あえなく“リストラ”されてしまった。この間わずか、4カ月。
「自治体の忠犬としての将来像が崩れ去って、捨て犬になったんだチン!」
と、当時をふりかえるアダチン。モチーフは、日本古来の犬種の狆(ちん)。“アダチ”と“チン”で、アダチン。アダチンの生みの親、スペースネコカンパニーの青木純さんが言う。
「(着ぐるみは)オリジナルのイラストとは違った、どこか威圧感のあるデザインに仕上がってしまいました。当初は“ゆるキャラ”へのカウンター的な存在として、目つきや言動がキツめのキャラ、“きつキャラ”を打ち出したんです」
ところが、
「解雇キャラが定着したことで、“きつキャラ=境遇がキツいキャラ”として有名になってしまっています」
と青木さん。
区の公式キャラでなくなってからも、足立区を盛り上げるため、イベントに参加したりツイッターなどで情報を発信したり、地道なPR活動を続けている。
「応援してくれている地元の商店街のみなさんやファンの思いにこたえたいんだチン! あと、大量に製作したグッズの在庫をどうにかさばきたいんだチン! かなり切実だチン!」
現在、足立区の公式キャラをつとめる「ビュー坊」とは、交流はない。
「かつて自分がそうなれるはずだった明るい道を歩んでいるビュー坊くんを見ていると、継子のような心境になるんだチン!」
昨年のゆるキャラグランプリでは、「100位以内に入れなかったら所属事務所を解雇」という条件で参戦し、結果は181位。アダチン、またリストラされた。
今は“野良犬”のような状態ではあるが、今回もゆるキャラグランプリに参加する。しかし、
「これ以上失うものもないので、緊張感のなさが否めないのが現状だチン!」
(太田サトル)
※週刊朝日 2015年12月4日号