検事の意向に沿う証言をする見返りだったのか、勾留中、検事から「特別待遇」を受けていたという。

「地検では、取り調べのたびに、すき家の牛丼やマクドナルドのハンバーガーなどを買ってもらった」

「検事の部屋では、たばこをもらって吸っていた」

「留置施設では、朝6時から一人で1時間くらいお風呂に入っていた」

「検事に本の差し入れを頼み、知人に持ってきてもらっていた」

 面会時間もたっぷり1時間もらえたという。

 日常生活どころか、株取引の便宜を図ってもらっていたとの証言まで飛び出した。売買する株の銘柄、金額を内妻に伝えてもらっていたという。

「検事や検察事務官に頼み、いくら買うとか売るとか全部指示していた。売買については内妻に聞いてもらえばわかる」

 この証言の際、弁護人は、検察事務官から内妻に送られたというメールの内容を示した。「○○(社名)という会社の株3千あるはずだが、月曜日1株500円以上なら全部売ってほしいとのことでした」(13年6月14日)、「確認したいことが。まず、△△(同)の株は買いましたか?という点」(同7月2日)といった文面があったという。

 元組長の証言は続く。

「M検事は『供述で協力してくれれば、求刑を12年にしてあげる』と言いました。『約束を破ったら検事を辞める』とまで言ったのに、実際は求刑が18年だった。別の検事に『約束が違う』と抗議したら、『それではみんな納得しなかった』と言われました」

 司法取引をめぐっては、日本でも導入に向けた法案が先の通常国会に提出されたが、成立は見送られた。

 弁護側は控訴趣意書の中で「検察官から上位者の関与を供述すれば刑は軽くなると繰り返し迫られ(中略)捜査機関の描くストーリーを提示された」と指摘している。

週刊朝日 2015年10月23日号より抜粋