抗争事件の関連捜査で、山口組総本部(神戸市)を家宅捜索する埼玉県警の捜査員ら(2010年2月) (c)朝日新聞社 @@写禁
抗争事件の関連捜査で、山口組総本部(神戸市)を家宅捜索する埼玉県警の捜査員ら(2010年2月) (c)朝日新聞社 @@写禁

 東京高裁で山口組vs.検察の“仁義なき戦い”が始まった。組織犯罪処罰法違反(殺人)の罪に問われ、一審で有罪判決を受けた6代目山口組直系組長の控訴審。複数の証人が組長の関与を次々に否定し、検察側との「司法取引」をうかがわせる爆弾証言まで飛び出している。

「自分の刑を軽くするため、検事の指示で、この事件の首謀者は落合さんだと一審ででっち上げた」

 10月5日、東京高裁429号法廷。ジャージー姿の男性の証言で、傍聴席に緊張が走った。

 弁護人に促されながら、男性は証言を続ける。

「そう言わないと、検事から『無期懲役とか懲役30年の重い罪になる』と脅かされた。調書は検事と作った、虚偽の内容でした」

 法廷の中央に座るのは、6代目山口組の直参で、小西一家総長の落合益幸被告(68)だ。

 7年前に埼玉県で起きた暴力団抗争事件に絡み、組織犯罪処罰法違反(殺人)と銃刀法違反の罪に問われ、一審のさいたま地裁で無期懲役、罰金3千万円の判決を受けた。多数の組員と共謀し、住吉会系組幹部を射殺したとされる。一審では「(落合被告から)報復の指示を受けた」という元組員3人の証言の信用性を中心に争われたが、地裁は「証言は信用できる」と結論づけた。

 だが──。控訴審では、すでに3人のうち2人が一審での証言を翻し、落合被告の関与を否定。残る一人、ジャージー姿の男性は「殺人罪を構成するうえで最も重要な証言をしていた」(落合被告の弁護団)とされるが、先の2人同様、主張を変えたのだ。

 ジャージー姿の男性は、小西一家傘下の大頭龍落合一家の元組長(45)。落合被告と同じ罪で起訴され、11年に懲役14年の一審判決が確定。現在、服役中である。

 控訴審の法廷で、元組長の証言は続いた。

「落合さんを首謀者にしてほしいと検事に頼まれた。落合さんには申し訳ないと思っています」

「俺の利益と検察の利益が一致した。(一審の証言は)検事と作文を作った」

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