喫煙と卵巣機能の関係とは(※イメージ)
喫煙と卵巣機能の関係とは(※イメージ)

 現在、6組に1組の夫婦が不妊に悩んでいるといわれる。治療を受ける前にできることはないのか。NPO法人「日本不妊予防協会」の理事長を務める久保春海医師に話を聞いた。

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 不妊症の定義は「妊娠を望む男女が避妊をしないで性交しているにもかかわらず一定期間妊娠しないこと」ですが、今年8月、日本産科婦人科学会が一定期間を「2年」から「1年」に短縮すると発表しました。定義どおり1年間妊娠しなければ、まず不妊検査を受けることをおすすめします。35歳以上であれば、それよりも早めに検査を受けましょう。

 米国生殖医学会では、不妊のリスクを高める四つの要因を示しています。一つが「加齢」。妊娠する能力は25歳から徐々に低下し始め、35歳以降は年齢ごとに急激に低下していきます。加齢によって卵子の質が低下するだけではなく、子宮内膜症や子宮筋腫など、妊娠を妨げる病気が発症するリスクも高まります。

 二つ目が「不健康な体重」で、肥満とやせ、どちらも妊娠率を下げると考えられています。肥満の場合、体外受精をしても採卵できる卵子の数や着床率が減るというデータがあり、やせていると卵巣機能が抑制されます。また、男性が肥満の場合、性機能障害(ED)のリスクが高まります。

 三つ目は「喫煙」です。意外と知られていませんが、女性の喫煙は卵巣機能を抑制し、早発閉経を招くこともあるのです。喫煙していなくても、受動喫煙によって卵巣機能が抑制されることもあります。男性の喫煙は、精子をつくる機能が抑制される可能性があります。

 四つ目が「性感染症」です。クラミジア感染症や淋菌感染症は自覚症状がないことが多く、放置すると卵管炎を引き起こすことがあります。その後遺症で子宮や卵管が癒着したり、卵管が詰まったりすると不妊の原因となるのです。男性も感染を放置すると精巣炎になり、精子をつくりにくくなることがあります。自覚症状が少ないとはいえ、おりものの色や匂いにいつもと違う症状があれば早めに婦人科を受診しましょう。

 こうしたリスクを避けることが、不妊の予防につながります。また、早く検査を受けることで重度の不妊症になるのを防ぎ、より負担が軽い治療で妊娠する可能性が高くなるのです。

週刊朝日 2015年10月16日号