M:翁長知事は6月の訪米で、沖縄に多くの海兵隊を置くことに否定的だったマケイン氏(米国上院軍事委員長)と会談しました。ところが、実際に会ったら辺野古推進になっていた。ケネディ駐日大使も同じ。まるで政府からの通達でもあったかのように「日本の内政問題」と言うだけだった。

F:それは当然のことなんですよ。オバマ大統領からすれば、辺野古移設の問題は鳩山由紀夫首相のときに混乱したから、これ以上関わりたくないのが本音。だから、共和党のマケイン氏とオバマ政権には、立ち位置に違いはない。それでも、大統領が代わり、日本政府が本気で交渉すれば、米国の方針が変わる可能性があります。

M:安保法制が国会で成立し、自衛隊が海外に出て、集団的自衛権を行使する可能性もあります。悪いシナリオだと、いずれ日本と中国の間で何らかの紛争が起こる可能性もある。

孫崎:では、米国に頼ればいいかというと、そうではない。先日、米国のシンクタンクであるランド研究所が新しい報告書を出しました。そのなかで、台湾周辺で米国と中国が衝突した場合、中国に優位性が出ていると書かれています。以前から専門家の間では指摘されていたことですが、権威あるシンクタンクが認めたことの影響は大きい。今後、これは米国の基本的な認識になっていくでしょう。仮に尖閣諸島で日中間の紛争が起きても、米国は日本と一緒に戦うことはしないと思う。

F:米国は、10年後には日本を見放して中国を選ぶかもしれませんよ。米国は、中国のことをかつてのソ連のようには考えていない。世界的な覇権は狙っていないと考えていますから。むしろ、取引次第ではアジアは中国に任せることもあるかもしれません。

孫崎:これが国際政治の現実ですよ。日本が「米国と仲良くしておけば、安全保障は大丈夫」と思っていても、米国や中国の動向次第で、安倍首相の思い描く未来にはならない。そこをちゃんと分析せずに、突き進められると、恐ろしいことになる。

F:いずれ、日本は米国だけでなく、中国にも頭を下げることになるかも(笑)。そうならないために集団的自衛権を認め、米国の武器を買い、中国より日本が米国のためになることを懸命にアピールしている。

(構成 本誌・西岡千史/松元千枝)

週刊朝日  2015年10月9日号より抜粋