免許を返納すれば、さまざまな特典はありますが、どういう内容なのかよくよくわかっていない人が多い(※イメージ)
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 高速道路の逆走など、高齢ドライバーによる事故のニュースを聞くたび、「一刻も早く車の運転をやめてほしい」と願う家族は多い。奈良県三郷町地域包括支援センターの高塚美和センター長(43)もその一人。いつも、同じ町内に一人で暮らす84歳の母親の身を案じている。

「母の軽乗用車をこの間見たら、バンパーはへこみ、ドアはひっかき傷ができて天井を除いて傷だらけ。人を傷つける前になんとか免許を返納させたいんですが、本人が言うことを聞いてくれないんです」(高塚さん)

 三郷町は人口の約3割が高齢者。町内には近鉄線とJRが走っているが、急勾配な坂が多く、車がなければ出かけられない高齢者が多いという。返納したがらないのは特有の環境が原因だった。

 免許の返納は、生活の足がなくなることに直結する。買い物や通院などが不自由になり、公共交通機関が少ない地方では深刻な問題だ。

「免許を返納すれば、さまざまな特典はありますが、どういう内容なのかよくよくわかっていない人が多い。母の場合、自分で運転したいという気持ちが強く、返納後、どう生活をしたらいいのか、不安に思っています」(同)

 高齢ドライバーによる事故は増加傾向にあり、各自治体や都道府県警ではその対策の一環として、特典を付けて返納しやすい環境づくりを進めている。その成果もあり、返納者数は年々増えている。

 運転免許の自主返納は、1998年4月に施行された。

 有効期限内に運転免許を返納して、その日から5年以内であれば、「運転経歴証明書」を受け取れる。

 手続きは自治体によって異なるが、運転免許試験場、警察署で行う場合が多い。運転免許証、顔写真、交付手数料千円などが必要だ。

 経歴証明書は、公的証明書として永久に使える。さらに、この証明書を提示すると、電車やバスなどの運賃や、飲食代が割引される特典がある自治体もある。自治体によっては、天然温泉の割引券、定期預金の金利優遇のサービスもある。

「申請による免許の取り消し件数は、2008年以降は一貫して増加しています。自治体等と連携しながら、免許を取り消した方への支援を充実させてきた結果です」(警察庁広報室)

週刊朝日 2015年10月9日号より抜粋