最近、がん細胞がヒトの免疫機能をブロックする仕組みを壊して、がん細胞に対する免疫を十分に働かせるようにする「がん免疫療法」が注目されています。卵巣がんでも免疫機能をブロックするPD―1、PD―L1に対する抗体の研究が進行中で、有効性が報告されています。近いうちに治験が開始されるでしょう。

 また、患者さんの卵巣がんの遺伝子変化を特定して、確実に効果が見込める薬剤だけを投与するといった、治療を個別化する時代になりつつあります。

 このように、さまざまな新しい薬物療法に期待が寄せられていますが、合併症などで手術ができない症例を除いては、やはり卵巣がんの治療は手術によるがんの完全切除を基本に考えるべきだと思います。残存するがん細胞の数がゼロに近いほど、予後がいいことがわかっているからです。

 なお、明細胞腺がんや類内膜腺がんは子宮内膜症が原因となって、比較的ゆっくりと進行することがあります。子宮内膜症がある人は定期検診を欠かさないようにしましょう。

 卵巣がんを疑われたら、婦人科腫瘍専門医のいる、症例を多く手がける施設を受診してください。

週刊朝日  2015年8月28日号