病気と晩期合併症、両方の克服へ…(イメージ)
病気と晩期合併症、両方の克服へ…(イメージ)

 東京都在住の小学校5年生・村田あかねさん(仮名・11歳)は、小学校3年生のとき、頭痛や吐き気などの症状が続いた。近所の小児科を受診したが、胃腸炎との診断で、薬を処方された。その後、ぐったりしたり、元気になったりを繰り返し、2カ月半ほどたったころ、学校を休むほど症状が強くなってしまった。

 あかねさんの症状がなかなか改善しないことから、小児科の医師はひょっとしたら脳の異常かもしれないと母親に伝えた。近所の総合病院でCT(コンピューター断層撮影)をおこなったところ、小脳に脳腫瘍(しゅよう)らしき影が見つかった。

 担当医から状況を聞かされた母親とあかねさんは、すぐに紹介された都立小児総合医療センターの脳神経外科を受診した。

「あかねさんの小脳にはかなり大きな腫瘍があり、精密検査により髄芽腫(ずいがしゅ)と判明しました。腫瘍自体以外に、小脳の腫瘍では高頻度に発症する水頭症がかなり進んでおり、危険な状態でした」

 水頭症は腫瘍が髄液の循環の邪魔になり、脳室が拡大する病気だ。主治医で同センター脳神経外科の井原哲医師は当時のことをそう説明する。

 あかねさんは入院し数日後に手術を受け、無事にすべての腫瘍が摘出された。

 脳腫瘍は、小児がんのなかで、血液がんに次いで2番目に多い。小児がん全体の約20%を占め、年間約400~500人に発症する。腫瘍のタイプが100種類以上と多いのが特徴で、約3分の2は悪性だ。5年生存率も90%以上期待できるものから、20%に満たない難治性のものまでさまざまである。多いのは神経膠腫(しんけいこうしゅ)、胚細胞(はいさいぼう)腫瘍、髄芽腫、頭蓋咽頭腫(ずがいいんとうしゅ)などで、あかねさんの発症した髄芽腫は3番目に多いタイプだ。この髄芽腫は、近年、飛躍的に治療成績が伸びてきた。

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